抄録
カルシウムイオン活量電極を用いて, その応用の可能性について種々検討を行った。この電極は各種の塩の存在により比較的敏感に影響をうける。すなわち, カリウム, ナトリウムのような1価の陽イオンおよびマグネシウムのような2価の陽イオンにより電極電位の上昇を来し, またカルシウムとの結合の考えられるフッ素, リン酸などの陰イオンによっては電位の下降がみられる。一般にこれら各種塩の共存によりNernst因子の低下と低濃度カルシウム域からの直線性の乱れが認められるのが特徴のようであった。その他, pHの影響, イオン強度の影響, 温度の影響, くり返し測定による電位の変動などさまざまな影響がみられた。このようなことから, 実際に各種の塩が共存する試料中のカルシウムの測定はまずpHとイオン強度を調整することによって行われるが, さらに上のような諸条件を十分に考慮した上で慎重に行われる必要があるものと考えられた。その結果, 一応歯質中のカルシウムの測定も可能ではあったが, これらの条件を調整することにおいて, この電極の応用の限界があるものと考えられた。