抄録
エナメル質溶解性測定のための生検法応用において, 同一個人の個々の歯について溶解性の分布とその経時 (日) 的測定による変化を検討しておくことが重要である。
今回, 著者らは, 1名の成人を対象として上下顎左右側中2大臼歯までの各歯種の唇頬面について, 酢酸ナトリウム-塩酸緩衝液 (酢酸1.4M, pH2.3) を用いてエナメル質溶解性を測定し, 次の結果を得た。
1) 上下顎とも左右の同名歯のエナメル質溶解性はほぼ対称的であった。ただし位置異常歯があるペアに例外を認めた。
2) 歯種別のエナメル質溶解性は, 第1大臼歯>第1, 2小臼歯>第2大臼歯>犬歯>切歯の順で大であった。
3) 測定を経時 (日) 的にくり返した場合のエナメル質溶解性は, 5回 (16日) 目以降で減少する傾向を示した。
4) 測定にともなう光沢消失は認められなかった。