抄録
37℃に保った殺菌および生菌乳酸菌飲料水中に固定したヒトの永久切歯を浸漬し, エナメル質表面および断面の各浸漬面における硬度変化を, ビッカース微小硬度計により経時的に測定した。
エナメル質の自然表面は, 殺菌, 生菌乳酸菌飯料水とも浸漬3時間後で明らかな硬度低下をきたし, その後も減少の一途をたどった。硬度測定不能時におけるビッカース圧痕の走査電子顕微鏡像は, エナメル質表層下の脱灰を示唆するもので, 原子吸光分析ではエナメル質の自然表面からCaの溶出が認められた。一方, エナメル質断面の硬度変化は, 自然表面に比べるとさらに顕著に現われた。また, 硬度測定不能時の圧痕形態は自然表面のものと異なって観察された。
殺菌乳酸菌飲料水では, エナメル質の自然表面あるいは断面において, どの歯牙もほぼ平均的に硬度が減少したが, 生菌乳酸菌飲料水では歯牙による個体差が著しくみられた。