口腔衛生学会雑誌
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歯科医師の手指汚染およびその消毒法について
小澤 亨司
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1981 年 31 巻 2 号 p. 108-130

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抄録

手指の消毒に関しては, Fürbringer以来多くの研究があり, 各種消毒薬の開発, 消毒方法, 消毒時間という点で数多く論義されてきたが, 消毒, 滅菌は医療の原点ともいうべきものであり, これを確実に行う事は, 医療従事者の義務である。特に歯科治療においては, 素手で治療を行なうという点で, 歯科医師と患者との間における相互感染の機会も多いと思われる。そこで歯科医師の手指汚染と消毒法ならびに歯科医師の手指消毒に関する現状をアンケート法により調査した。これらの成績は次の通りである。
1) 各種消毒薬の手指に対する消毒効果は, 5分間消毒後の消毒率は0.1%塩化ベンザルコニウム98.5%, ヒビスクラブ97.8%, 0,02%クロールヘキシジン95.4%, 2%クレゾール90.5%であった。
2) 歯科医師の手指細菌数の1日の時間的変動については, 患者数が他の日より少ない場合に菌の増加傾向がみられた。手指消毒前に石ケンによる手洗いを行わないものでは, DHL培地に陽性を示したものがあり, グラム染色を行った結果, グラム陰性の桿菌とグラム陽性の球菌がみられた。
3) 診療行為別による手指の汚染については, 汚染率は診療前に比してクラウン形成が15.6倍で最も大であり, 以下髄腔開拡13.9倍, スケーリング12.8倍, クラウン装着10.0倍, インレー形成9.4倍, 抜歯9.2倍の順であった。
4) 歯科医師の手指消毒に関するアンケート調査では, (1) 使用消毒薬はクレゾールが最も多く, 以下塩化ベンザルコニウム, クロールヘキシジン, 塩化ベンゼントニウムの順であり, 消毒薬を使用しないで普通石ケンのみを使用している歯科医師もあった. (2) 消毒薬に手指を浸す時間は, 5秒前後が41.7%で最も多く, 以下2秒前後, 15秒前後, 30秒以上の順であった。

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