口腔衛生学会雑誌
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31 巻, 2 号
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  • 骨代謝に対する影響
    石田 覚也
    1981 年31 巻2 号 p. 74-89
    発行日: 1981年
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
    フッ素 (F) が, 骨代謝に及ぼす影響について, 骨代謝を反映する一つの指標とされる尿中hydroxyproline (OHPro) を手がかりに検討した。実験はウイスター系雄性ラットを用い, 低F飼料飼育下で, 各種濃度のNaF溶液を45日間自由に飲用させた慢性毒性実験と, NaFを一回投与した急性毒性実験を行った。
    慢性毒性実験では, 100, 200ppmF飲用群で, free-及びtotal-OHProの排泄減少傾向がみられ, 骨吸収の抑制とコラーゲンの合成阻害が考えられた。10, 50ppmF飲用群では, F飯用15日目頃に尿中OHPro (free, total) の排泄増加がみられ, 一時的な骨吸収の促進が起こるようであった。これらの結果から, ある程度以上のフッ化物の飲用により, 初期変化として一時的な骨吸収がみられ, その後持続的なF摂取によって骨吸収が抑制されるという過程が推測された。大腿骨の軟X線写真像では, 200ppmF飲用群で骨皮質が薄くなる傾向がみられた。また大腿骨中の無機成分については, 10, 50ppmF飲用群でCa/P (モル) 比の上昇がみられた。
    急性毒性実験では, NaF投与時に骨の代謝活性の高い部分で, 一時的に急激な骨吸収が起こるようである。これらの変化は血清CaとFとの反応などが考えられ, さらにCa代謝機構が複雑に関与しているようであった。
    いずれの実験においても血清alkaline phosphatase活性には, 明らかな傾向は認められず, Fは骨芽細胞に対してはそれほど影響を及ぼさないものと考えられた。
  • 井上 直彦, 郭 敬恵, 伊藤 学而, 亀谷 哲也
    1981 年31 巻2 号 p. 90-97
    発行日: 1981年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    歯と顎骨の不調和 (discrepancy) の, 齲蝕に対する病因性を検討する目的から, いくつかの時代に属する日本人古人骨について, 齲蝕の調査を行った。そのうち, 今回は主として後期縄文時代における齲蝕の実態について報告し, すでに発表した鎌倉時代, および厚生省による1975年の実態調査の結果と対比して考察した。
    齲蝕有病者率からみるかぎり, 縄文時代の齲蝕は, 鎌倉時代よりも少く, 現代よりはるかに少いが, 齲歯率, 喪失歯率, 重症度別分布などからは, むしろ現代人に近い商い頻度と, 重症度をもっていたことが知られた。これに対して, 鎌倉時代は, 日本人が齲蝕に悩まされることが最も少なかった時代であったと考えることができる。
    縄文時代には, discrepancyの程度がかなり低かったことは, すでに著者らが報告したが, 今回の調査における, 歯の咬合面および隣接面の咬耗の様式からも, このことが確かめられた。そして, 齲蝕の歯種別分布の型からみても, この時代の齲蝕は, 口腔内環境汚染主導型の分布であると考えられた。これに対して鎌倉時代および現代における齲蝕は, それぞれ, discrepancy主導型, および複合型の分布と解釈された。
    以上の他, 縄文時代および鎌倉時代の食環境についても若干の意見を述べたが, これらを含めて, 今後検討すべき課題は数多く残されているように思われる。
  • 小野 房子, 井上 貴一朗, 大塚 裕純, 沼田 圭介, 山田 茂
    1981 年31 巻2 号 p. 98-107
    発行日: 1981年
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
    小学校3校, 4学級の児童計222名 (男子110名, 女子112名) を対象として・中切歯と第一大臼歯の歯垢指数の発現率を比較した。
    1がGreene, Virmillionらの歯垢指数0の場合, 6も0である場合は約25%であって, 他は1露2・3度のいずれかであった。また1, 1, 1の場合も1|と類似した成績であった。
    上下顎, 左右側の中切歯間, 第一大臼歯間にはどの学校, どの学年にも有意の相関 (r) を認めることが多かったけれども, 中切歯と第一大臼歯間には有意の相関を認めたものが1校2学級, 他の2校2学級には有意の相関を認めたものは稀であった。
    小学校児童を対象とした場合, 前歯部で全顎を代表させることには疑問がある。また小学校児童の刷掃指導にあたっては, 前歯部の歯垢附着状態を調査するだけでなく, 臼歯部も調査する必要があると考えられる。
  • 小澤 亨司
    1981 年31 巻2 号 p. 108-130
    発行日: 1981年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    手指の消毒に関しては, Fürbringer以来多くの研究があり, 各種消毒薬の開発, 消毒方法, 消毒時間という点で数多く論義されてきたが, 消毒, 滅菌は医療の原点ともいうべきものであり, これを確実に行う事は, 医療従事者の義務である。特に歯科治療においては, 素手で治療を行なうという点で, 歯科医師と患者との間における相互感染の機会も多いと思われる。そこで歯科医師の手指汚染と消毒法ならびに歯科医師の手指消毒に関する現状をアンケート法により調査した。これらの成績は次の通りである。
    1) 各種消毒薬の手指に対する消毒効果は, 5分間消毒後の消毒率は0.1%塩化ベンザルコニウム98.5%, ヒビスクラブ97.8%, 0,02%クロールヘキシジン95.4%, 2%クレゾール90.5%であった。
    2) 歯科医師の手指細菌数の1日の時間的変動については, 患者数が他の日より少ない場合に菌の増加傾向がみられた。手指消毒前に石ケンによる手洗いを行わないものでは, DHL培地に陽性を示したものがあり, グラム染色を行った結果, グラム陰性の桿菌とグラム陽性の球菌がみられた。
    3) 診療行為別による手指の汚染については, 汚染率は診療前に比してクラウン形成が15.6倍で最も大であり, 以下髄腔開拡13.9倍, スケーリング12.8倍, クラウン装着10.0倍, インレー形成9.4倍, 抜歯9.2倍の順であった。
    4) 歯科医師の手指消毒に関するアンケート調査では, (1) 使用消毒薬はクレゾールが最も多く, 以下塩化ベンザルコニウム, クロールヘキシジン, 塩化ベンゼントニウムの順であり, 消毒薬を使用しないで普通石ケンのみを使用している歯科医師もあった. (2) 消毒薬に手指を浸す時間は, 5秒前後が41.7%で最も多く, 以下2秒前後, 15秒前後, 30秒以上の順であった。
  • 佐藤 誠, 尾崎 文子, 岡田 昭五郎, 鶴水 隆, 大西 正男
    1981 年31 巻2 号 p. 131-136
    発行日: 1981年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    Streptococcus mutans 10449株 (人型) とRC-20株 (ラット型) の各々から, 変異誘導物質を用いた誘発変異によっで, 菌体外多糖体産生能の高い株 (phase I) と低い株 (phase III) を分離し, これら4菌株の口腔内定着性とcariogenicityをラットを用いた動物実験によって検討した。硫酸ストレプトマイシン前処理により口腔内常在細菌叢を抑制し, 離乳したラットを4群に分け, 口腔内に8日間各菌株を接種し, 6PMVを与えて30日間飼育した像, 臼歯裂溝部に発生したう蝕の評価を行なった。菌の定着率はいずれの菌株でもphase Iの方が高く, 10449株phase IとRC-20株phase Iの間には差は認められなかった。しかしRC-20株の方が10449株よりもラットに対するcariogenicityの高いことが認められた。10449株ではphase Iの方がphase IIIよりcariogenicityが高かったが, RC-20株では, phase I接種群とphase III接種群の間にはう蝕発生状態に差が認められなかった。RC-20株phaseIII接種群の接種菌定着率は最も悪く, この群のみに菌接種の翌日からラットの口腔内に常在するラット型Str. mutansが出現するようになり, このStr. mutansがRC-20株phase III接種群のラットにう蝕を発生させたと考えられた。Str. mutans10449株とRC-20株に対するラット血清の凝集価は, 各群とも同様な値であった。
  • 飯島 洋一
    1981 年31 巻2 号 p. 137-150
    発行日: 1981年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    乳歯エナメル質にAPF溶液を1分から5分間塗布したのち, エナメル質に取り込まれるフッ素が口腔内で時間の経過とともに変動する状態を検討した。 塗布後のエナメル質フッ素濃度は24時間までは口腔内で急速に減少するが, 24時間以降48時間までのフッ素濃度の減少は少なかった。 48時間後の第1層のフッ素濃度2,000~3,500ppmは1カ月後も保持され, しかも対照群のフッ素濃度に比較して統計学的に有意に高かった。 対照群に比較して統計学的に有意に高いフッ素濃度は, 1分間塗布群は第1層, 2分間塗布群は第1層と第2層, 3分間塗布群は第1層と第3層, 5分間塗布群では第1層から第3層にまでおよんでいた。 これに対して第4層から第6層にいたる内層のフッ素濃度については, 48時間後には対照群との間に有意差を認めえなかった。
    乳歯エナメル質のCa溶出量は, APF溶液の塗布により対照群の約1/2に減少したが, 塗布時間を1分から5分に延長しても塗布群問のCa溶出量に明らかな差は認められなかった。
  • 塚田 満男, 岩倉 政城, 島田 義弘
    1981 年31 巻2 号 p. 151-157
    発行日: 1981年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    フッ化物歯面塗布に伴って口腔に残留するフッ素量の測定と塗布後の不快症状の有無を質問紙により調査した。研究対象は仙台市内の某歯科衛生士学院の女子学生44名で, 彼女らに2%NaF溶液と偽薬 (生理的食塩水) の歯面塗布を5日聞隔, 二重盲検法により相互実習させた。塗布はMuhlerの方法に準じて綿球で行い, 2mlの塗布液を使用させた。
    塗布終了後に残液, 塗布に用いた綿球および防湿用綿花, 塗布中に排泄された唾液等を個別に集め, 各々の試料についてフッ素量をイオン電極法で測定した。その結果, 口腔に残留したフッ素量は平均1.83mg, 範囲は0.70~3.19mgであり, 体重1kg当り残留量は平均0.037mg, 範囲は0.013~0.067mgであった。質問紙は2日後に回収し, 不快症状を訴えた者については面接を行った。不快症状の発現頻度に関する質問紙による調査成績では2種の塗布液の間に統計学的有意差は認められなかった。不快症状の発現者群と非発現者群の体重1kg当り残留量の平均値を比較すると両群の間には差がなく, むしろ後者の値の方が高かった。不快症状の発現を回答した者の大多数は臨床実習における緊張と疲労を訴えていた。
    以上から, 本実験において訴えられた不快症状は, フッ素の体内取り込みによる急性中毒とは考えにくく, 実習に伴う心理的, 肉体的ストレスにより惹起されたものであろう。
  • 大西 正男, 尾崎 文子, 吉野 富佐子, 村上 淑子
    1981 年31 巻2 号 p. 158-162
    発行日: 1981年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    100匹のWister純系鼠を5群に分け, 全群に同一う蝕誘発食餌6PMVを与えたが, 飲物としてコントロール群には脱イオン水を, 残りの4群には同一フッ素濃度 (10ppm) のNaF溶液, 茶の浸出液とその稀釈液を与えた。30日のう蝕期間で, 茶投与群はNaF溶液群よりも効果的なう蝕抑制をもたらした。抑制率は茶の稀釈度に反比例した。茶は多くの生物学的活性物質を含みまたう蝕予防に好ましい物理化学的性質をもつていると考察された。
  • 1981 年31 巻2 号 p. 172
    発行日: 1981年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
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