1994 年 44 巻 5 号 p. 638-644
4種の腸内細菌は主としてActinomycesやCandida albicansといったグラム陽性の口腔常在微生物と菌株特異的に共凝集した。口腔内微生物との共凝集性はEnterobacter cloacaeが最も高く, 次いでSerratia marcescens, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniaeの順であった。共凝集は一様に腸内細菌上の易熱性の成分によって仲介されていた。マンノースを添加することによって, 一部の共凝集反応は解離されたが, その他の反応は影響を受けなかった。このことは認められた共凝集反応には腸内細菌上のマンノース感受性と非感受性の2種の凝集素が関与していることを示している。供試した20株の腸内細菌のうち12株はまた, ヒト全唾液によっても凝集した。口腔常在微生物との共凝集能および唾液による凝集性は口腔内における病原性腸内細菌の定着を高めるものと考えられる。