口腔衛生学会雑誌
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脱灰歯根象牙質におよぼすフッ素徐放性シーラントの口腔内における効果
稲葉 大輔飯島 洋一高木 興氏
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1994 年 44 巻 5 号 p. 659-664

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抄録

フッ素徐放性材料 (FRD) がヒト歯根象牙質の初期齲蝕におよぼす効果をin situで検討した。被験者は22~25歳の成人21名で, FRDとしてフッ素徐放性シーラントを用いた。口腔内実験は, 脱灰した歯根象牙質試料を, はじめにシーラント併用なしで, 次に試料を換えて併用ありで, 各7日間, 被験者の上顎第一大臼歯頬面に装着して行った。回収した試料を順に対照群, FRD群とし, マイクロラジオグラフ (MR) から脱灰深さ (Ld) とミネラル喪失量 (△Za) を評価した。MRの所見は個別にきわめて多様である特徴を示した。Ldの平均値 (単位: μm) は, 口腔内装着前: 55.7±4.3 (±S.D.), FRD群: 58.2±10.7, 対照群: 65.3±15.5を示した。また, △Zaの平均値 (単位: ETa・μm) は, 口腔内装着前: 3,670±527, FRD群: 4,733±1,355, 対照群: 5,569±1,490であった。各指標ともFRD群で低い値を認めたが, MR所見上の著しい個体差を反映して, FRD群と対照群との差は統計学的に有意ではなかった。ただし, 口腔内装着前とFRD群の間には各指標とも有意差が認められず, 個別には21名中17名でFRD群が対照群よりも低い△Zaを示し, かつFRD群の5例ではMR上で明瞭な再石灰化所見が観察されたことは, FRDが根面初期齲蝕の進行を抑制しうる可能性を示唆すると考えられた。

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