抄録
小児医療に従事する医師が小児に使用できる医薬品の現状や小児を対象とした治験に対しどのように考えているかを明らかにする目的で調査を実施した。2008年7月に全国126の大学附属病院,33の小児専門医療機関に調査用紙を送付し,小児医療に従事する医師に匿名で回答を求めた。調査の内容は,医師個人の属性に関するもの(臨床経験年数,専門領域,治験参加の状況等)8項目,小児用医薬品開発,適応外使用や小児治験の現状に関する考え40項目,小児治験の課題に関する考え20項目,小児治験の参加に関する考え4項目と,小児治験についての自由記載とした。属性と自由記載以外の回答は,「全く思わない」「そう思わない」「そう思う」「非常に思う」の4段階評定尺度を用いた。791名から返送があり,790名の回答を解析対象とした。回答した医師の臨床経験年数は5年以上10年未満が193名と最も多く,以後順次減少していた。最も少なかったのは5年未満で45名であった。95%以上の医師は「小児に使用できる医薬品が少ない」「適応外使用せざるを得ない」と現状を認識しており,「小児の適応拡大と小児用医薬品開発の推進が必要」と回答した。「治験に積極的に取り組んでいる」と回答したのは32.0%であったが,「今後取り組みたい」という回答が70.7%あった。小児治験に参加するには「時間的余裕がない」と回答したのは61.5%であった。今後の課題として,90%以上の医師が「治験の必要性の啓発」,「CRCの配置」と「有害事象発生時の支援体制整備」「小児治験に精通した医師やCRCの育成」,「行政的支援」,「心理社会的問題解決」,「医師と患者家族との信頼関係構築」が必要と回答した。「今後治験に取り組みたい」と回答した医師の比率には臨床経験年数による差はなかったが,「積極的に治験に取り組んでいる」「知識・技能がある」と回答した医師の割合は臨床経験年数の多い医師ほど多くなり,「治験に対する患児の理解や同意取得の方法がわからない」「治験に関する作業内容がわからない」という回答は,臨床経験年数が少ない医師ほど多かった。小児医療に従事する医師は小児用医薬品開発と小児治験の必要性を認識しており,小児治験推進には,医学生や臨床経験の浅い医師への教育と治験実施のための環境整備が必要と考えられた。