抄録
感染症の迅速診断キットは,A群β溶血連鎖球菌用の製品がアメリカで登場し,ほどなく我が国にも導入された。我が国では,インフルエンザ用の製品の発売をきっかけに,日常診療の中に広く深く浸透した。対象とする病原微生物の種類も増え,製品自体への工夫も重ねられて,現在に至る。迅速診断キットは,感染症の原因となっている微生物を捉えることが目的であるが,それによって抗菌薬や抗ウイルス薬の投与の判断材料になるなど,治療内容にも影響していくことから,臨床薬理学とも密接に関係している。しかしながら近年では,迅速診断キットの特性が十分に理解されないまま,検査の実施ばかりが求めれる風潮が高まっている。迅速診断キットは,感染症の診療の中で総合的な判断の参考として適正に利用され,至適な治療に結び付けられていくことが期待される。