2025 年 86 巻 7 号 p. 884-889
乳癌においては乳管内成分の部分的自然退縮,所謂healingの報告が散見されるが,日常診療上の問題となることは少ない.今回われわれはhealingを伴い,病変の広がり診断に苦慮した浸潤性乳癌の1例を経験したので報告する.症例は64歳,女性.検診でカテゴリー4の石灰化病変を認めた.初回針生検では悪性所見を認めず,経過観察では石灰化巣が一時減少していたが,2年後に石灰化巣が再び増加し,再度の針生検で乳管癌の診断となった.左乳房部分切除術+センチネルリンパ節生検が行われ,病理診断は浸潤径7mmで広範な乳管内進展成分を伴うHER2陽性乳管癌であった.乳管内成分はviableな部分とhealingに陥った部分とが混在し,両者の一部が切除断端に近接していたため,後日残存乳房切除を行ったが,癌の遺残やhealingの所見は明らかではなかった.DCIS成分のhealingをviableな成分と同様に評価することは適切な外科切除範囲の決定に役立つ可能性が考えられた.