抄録
小児の尿路感染症は,乳児期で多い細菌感染症の一つで抗菌薬療法の適応になる。標的となる菌は,腸内細菌が多く,大腸菌,クレブシエラ属菌,腸球菌などがみられる。小児では症状を訴えられないため,上部尿路感染症の診断は,発熱の有無と尿検査に頼ることが多い。尿のグラム染色が施行できる施設では,グラム陰性桿菌か,グラム陽性球菌で使用する抗菌薬を絞ることができる。グラム陰性桿菌では,大腸菌などの腸内細菌,泌尿路系の異常がある場合には緑膿菌などを想定し,グラム陽性球菌では主に腸球菌を想定する。グラム染色を施行できない場合は,頻度の多いグラム陰性桿菌に絞るか,両方をカバーするレジメンで治療を開始する。腸球菌は,ペニシリン系やバンコマイシンに感受性を示し,セファロスポリンは自然耐性をもつ。また成人と異なり,小児の尿路感染症に菌血症を合併することは少なく,全身状態が良ければ,抗菌薬が外れていても感受性結果をみてから治療薬を変更しても,重症化することは少ない。投与方法は,静注,経口でも差がないことが多いが,国内では静注で開始されることが多い。経験的な治療は,頻度の多い大腸菌はペニシリン耐性が多いため,第1~3世代のセファロスポリンが使用される。ペニシリン感受性腸球菌も念頭においたレジメンでは,アンピシリンとゲンタマイシンの併用が行われる。感受性が判明したあとの治療では,効果のある薬剤でより狭域薬剤にDe-escalationを行う。近年,ESBL(Extended Spectrum Beta-lactamase,基質拡張型βラクタマーゼ)産生の腸内細菌が増加しており,小児領域でも遭遇することがある。セフメタゾールを除く第4世代セファロスポリンまで耐性を示し,ゲンタマイシンを含まないレジメンでは外すことがある。ESBL産生菌の尿路感染症の治療は,重症でなければ,感受性をみて,セフメタゾール,ゲンタマイシン,ST合剤を使用することが多い。