日本小児臨床薬理学会雑誌
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Print ISSN : 1342-6753
小児慢性肉芽腫症腸炎に対するサリドマイド懸濁製剤の実用化に資する運用方法の検討
齊藤 順平河合 利尚赤羽 三貴今泉 仁美新井 勝大小野寺 雅史石川 洋一
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2017 年 30 巻 1 号 p. 63-68

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抄録
【背景】慢性肉芽腫症(CGD)は,殺菌能が低下する原発性免疫不全症で,CGDの約半数に慢性腸炎(CGD腸炎)を合併する。従来,CGD腸炎に対してステロイドや免疫抑制剤が使用されてきたが,致死的感染症をきたす危険性が高く,その使用は著しく制限される。サリドマイド製剤のサレドⓇCap(藤本製薬;以下,本剤)は,再発又は難治性の多発性骨髄腫に対する希少疾病用医薬品として指定され,2008年に国内承認,2012年以来,性結節性紅斑に対して追加承認された。また近年,本剤の免疫調節作用が明らかとなり,CGD腸炎に対する本剤の有用性が国内外で報告された。今回CGD腸炎の小児例に対して本剤を用いた臨床研究を実施するにあたり,幼児から服用可能なサリドマイド製剤(サレドⓇCap)の懸濁液(以下,懸濁液)として調製することを考案した。本剤を使用する際には,胎児への催奇形性を回避するため「サリドマイド製剤安全管理手順書(TERMSⓇ)」を遵守することが義務づけられていることから,当センター倫理員会で承認された本臨床研究実施計画書をTERMSⓇ管理センターへ申請し,本剤を懸濁液として調剤する運用を開始した。【方法】薬剤師が本剤へ曝露せず,懸濁液を調剤するための方法について検討した。また,適正な調剤・交付・施用・残液管理を行うために,TERMSⓇを遵守した運用手順について検討した。【結果】簡易懸濁法は閉鎖的環境で調製可能であるため,薬剤師が本剤へ曝露することなく調剤することが可能であった。懸濁液の安定性試験および曝露時のリスク管理に関しては,藤本製薬から情報提供を受けた。当センター倫理委員会で,本臨床試験における懸濁液の調剤・運用方法を含めて承認を得たのちに,TERMSⓇ管理センターの承諾を得て運用を開始した。CGD患児7例中4例が,懸濁液を服用した。幼児であることを考慮し,1回服用量を5mLとして,濃度を調節することで薬用量を調節した。本臨床研究において,TERMSⓇを逸脱する行為はなかった。【結語】ドラッグ・リポジショニングによる希少疾病用医薬品の開発では,積極的な臨床試験が望まれるが,小児科領域では小児用剤形がないために,調剤や運用に関して問題が生じ得る。本剤のような厳格な管理を要する薬剤では,薬剤部および各専門部門が連携し,医療施設全体として研究開発を進める体制を構築する必要があると考える。
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© 2017 日本小児臨床薬理学会
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