抄録
薬物動態 (Pharmacokinetics: PK) は厳密な数学的取り扱いが通常だが,ベッドサイドで応用しようとすると限界を感じる事が多い。 妊婦や小児といった, PK の特徴が標準的なヒト (成人男性) からずれている集団で,その解釈や臨床応用を考える時に特に困る事になる。これらの集団ではオフラベルの薬の使用が多く, その PK の特徴を知る事は臨床的に意義がある。 そこでこの総説では PK の概念を指数関数抜きで説明する事から始め,妊婦や小児のクリアランスの変化を中心に, その変化の理由はどこにあるのかを解説する。特に,体重あたりのクリアランスが小児期に成人レベルを超える事, そのため体重あたりの投与量が大きくなる事, 同様に妊娠中は多くの薬のクリアランスが増える事などの背景にある要因を考えていく。これらの現象が肝の薬物代謝酵素発現や糸球体ろ過率の増加で説明できる場合と出来ない場合があり,それは薬の除去率の違いによる事を説明する。