抄録
【背景・目的】新生児集中治療室(NICU)における未熟児の栄養療法に関して,近年Early Aggressive Nutritionの概念が推奨されるようになり,当院においてもアミノ酸製剤を増量した組成で投与されるようになった。しかし,長期の静脈栄養療法を行う中で,組成を変更した時期より誘導ルート内に黄褐色系異物の出現が13例みられた。これらの症例の共通点として,(1)側管から長期に同時投与している脂肪乳剤があったこと,(2)2週間以上の投与が実施されていたこと,(3)投与速度が緩徐であったことの3点であった。そこで,アミノ酸増量に起因したメイラード反応や脂肪乳剤による影響の検証および臨床現場で得られた黄褐色系異物の由来成分を解析することとした。【方法】アミノ酸製剤を増量した組成としてフィジオⓇ35(500mL)+プレアミンⓇP(150mL)+オーツカMV(1mL)(輸液①),従来のフィジオⓇ35(500mL)+プレアミンⓇP(80mL)+オーツカMV(1mL)(輸液②)をそれぞれ0.5mL/hrの速度でルートに流し,イントラリポスⓇ20%は0.1mL/hrで側管から混合し,4週間継続してルートを観察した。輸液製剤は1日毎に調製し,温度,湿度,光度は保育器内に近い環境に設定し,環境状況と混合液のpHを測定した。また,臨床現場で出現した黄褐色系異物は,薄層クロマトグラフ法(Thin Layer Chromatography:TLC)及び赤外吸収(Infrared:IR)スペクトル試験を用いて解析した。
【結果】実験環境は,温度32.0±0.9℃,湿度7.8±3.2%,光度208±21.8luxであった。混合後のpHは輸液①5.65±0.16,輸液②5.45±0.13で有意な差はなかった。いずれの輸液も外見上の変化は認められなかったが,3週間が経過した時点で輸液②のルート排出部にわずかに白色固形物が析出した。臨床現場で出現した黄褐色系異物は,TLCにおいてイントラリポスの大豆油と同位置にスポットが展開され,IR試験においてもイントラリポスの大豆油と同等な波形が認められた。【考察】実験結果より黄褐色系異物の出現やpH低下が確認されなかったことから臨床現場で出現した黄褐色系異物はメイラード反応とは別の原因であることが考えられた。TLC及びIR試験結果より黄褐色系異物はイントラリポスが化学反応を起こした大豆油の可能性が示唆された。電解質,温度,pHなどの複合的な要因と流速や投与期間,PIカテーテルの使用といった条件に高濃度のアミノ酸が加わることにより,イントラリポスの粒子が凝集し,滞留が生じることでイントラリポスが油層と水層に分離され,黄色の大豆油成分が素因として黄褐色系異物が出現したと推測する。