日本小児臨床薬理学会雑誌
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小児在宅医療における散剤調剤の課題:小児用製剤開発に向けた提言
川名 三知代初田 稔瀬高 園子廣原 正宜串田 一樹石川 洋一
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2019 年 32 巻 1 号 p. 21-27

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抄録
近年の小児医療の進歩によって,重症の難治性疾患の小児も成長し,医療的ケアを継続しながら自宅で過ごす小児在宅医療の重要性が増している。しかし,患児らの複雑な処方に対して調剤業務の負担が大きく,多くの薬局が小児在宅医療に積極的にかかわれない状況を招いている懸念がある。医療依存度の高い患児の処方を地域密着型の薬局が断らずに応需できる環境を整え,人々のつながりの中で成長を見守る地域共生社会の実現が,筆者らの一連の取り組みの大きな目標である。本報告では,当薬局の小児在宅患者12名の処方について,患者ごとに散剤調剤時間を計測して人件費を推算,処方薬の種類・処方日数・内服調剤料・ハイリスク薬のリスク区分・散剤への加工指示・患者背景を調査した。1例については調剤者を変えて調剤を行い,監査および仕分け時間も計測した。さらに,主な処方元である国立成育医療研究センターの薬剤部で錠剤・カプセルから散剤へ加工されている医薬品の品目と,当薬局の小児在宅患者に処方され同様に加工している医薬品の品目を比較した。その結果,小児在宅患者一人当たりに処方されていた分包が必要な散剤は,平均7.7種類,処方日数は7日~99 日分であった。患者ごとの散剤調剤時間は30分~300分,内服調剤料は470~5430円であり,散剤調剤時間と内服調剤料に線形の相関関係は認められなかった(r2=0.22)。10名が超重症児(者)・準超重症児(者)であり,全員に経管投与への配慮が必要であった。薬剤師の熟練度と作業に対する慣れによって散剤調剤時間は変動した。また,成育で粉砕・脱カプセルにて散剤へ加工していた医薬品の数量の上位20品目のうち,当薬局でも同様に加工していた7品目は中枢神経系の医薬品であった。一方で,当薬局では加工していない13品目のうち7品目が循環器系の医薬品であった。散剤調剤に時間がかかる要因は,粉砕・脱カプセルにて加工した散剤の取り扱いの難しさであると考察した。薬剤師による散剤調剤時間の変動は,小児在宅患者の散剤調剤がスキルを要する複雑な作業であることを示す。また,中枢神経系の小児用製剤は,小児在宅医療で経管投与することを想定して,溶液や懸濁液として小児用の細いチューブを閉塞させることなく通過するような製剤設計が求められる。小児用製剤開発の促進に向けて剤形変更の現状に関して全国調査が切望されているが,小児専門の病院だけでは得られる情報が限られる。ここに地域薬局という研究軸が加われば,地域の多様な患者集団の生活の場面に寄り添った製剤開発や,薬物療法のニーズに即した薬事制度・報酬体系の議論が可能になる。
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© 2019 日本小児臨床薬理学会
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