環境化学
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排ガス中の溶剤回収装置を使用した金属製品製造工場におけるトリクロロエチレンの収支
北嶋 永一村山 等小林 哲也家合 浩明
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1991 年 1 巻 3 号 p. 553-557

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抄録

トリクロロエチレン (TCE) には優れた脱脂能力があるため金属製品製造業で広く用いられているが, 使用されるに従いTCEは徐々に環境へ排出されている。TCEの主な排出先である大気中では比較的短期間で光分解を受けることが知られてはいるが, TCEには発ガン性が認められているため, 金属製品製造工場からのTCEを含むガスの排出を抑制することは重要である。
ここでは, 金属製品製造業の工場で使用されている溶剤回収装置の効果を見積るため, 事例的に新潟県内のA工場について様々なTCE排出経路別に排出状況とTCE移動量の収支を調べた。
金属製品洗浄装置の上部から集められたTCEを120-460ppm含む排ガスを溶剤回収装置で処理した場合, 処理後の排ガス中TCE濃度は2ppm未満となり, TCEの捕集効率は99%以上と良好であった。溶剤回収装置を付けたA工場の排出経路別TCE移動量の収支を調べたところ, TCE使用量のうち30%は溶剤回収装置によって回収されていた。系外に排出される割合は, 強制換気によって11%, 廃TCEとして7%, 溶剤回収装置の稼働に伴って発生する分離水によっては1%未満であった。残りの約50%は自然換気によって失われていると考えられた。
これらの結果から, 金属製品洗浄装置周辺の密閉を良くし, TCEの保存時の揮散を防止することでTCEの回収効率はあがると考えられる。

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