抄録
1984~1993年の10ヵ年間にわたり東京都内の2ヵ所の大気監視局 [大田区大森南 (準工業地域) , 港区白金台 (住宅地域) ] において, , 3線吸収法 (10μm以上の粗大粒子をサイクロンで除去) とハイボリュームエアサンプラー (HV) 法 (湿度50%に調整後, 秤量) で測定した大気中の浮遊粉塵の値を比較した。解析の結果, 2種の測定値の間には全般に高い相関 [大田局; r=0.690 (0.529, 0.879) , 港局; r=0.857 (0.807, 0.907) , () 内はβ線吸収SPM計の交換 (1991年3月) の前期, 後期] が見られ, 1991年4月以降では以下の直線関係式を認めた。
大田局; HV値; [1.2~1.4~1.7] ・β値+ [10~27~34] 港局; HV値= [0.9~1.1~1.6] ・β値+ [3~26~36]
ここで, それぞれの括弧の中の数値は; [ (95%信頼区間の下限値) ~ (直交回帰式 (Linear relationship) の値) ~ (95%信頼区間の上限値) ] を示している。
両局 (南北に約8kmの距離) における浮遊粉塵の濃度変動パターンは類似していたが, 大田局のHV値は港局に較べて粗大粒子の比率が高いためか, β値との相関が低くなった。また, 相対湿度が高く, 風が弱いほどいずれの浮遊粉塵濃度も増大したが, 温度による影響は見られなかった。 [HV-β] 値は, HV値が高いほど増大し, 相対湿度が80%以上になると小さくなる傾向が認められた。
ここで求めた関係を基に連続測定の年間平均β値から算出したHV値, あるいは実測HV値と世界の主要都市のHV値の比較から, 東京の浮遊粉塵の汚染度合いは開発途上国よりも全般に低いことを認めた。