抄録
ICP質量分析法による環境試料中のGaとInの正確で迅速な分析方法を検討した。試料を硝酸/過塩素酸/ふっ化水素酸で分解し, 希硝酸に溶解して試験溶液とした。マトリックス効果を補正するため, Rhを内標準元素として用いた。Gaの定量では69Gaは, Ba2価イオンと37Cl16O2分子イオンのスペクトル干渉を大きく受けるため, 71Gaによることが不可欠であった。本法による8環境標準試料 (底質, 岩石, 土壌及び飛灰) のGa分析値は, いずれの試料でも参考値と良く一致した。また, 繰り返し分析精度 (n=6) は, Buffalo River Sediment及びSL-1は1.3, 0.4%であった。一方, 本法によるIn定量では115Snによる同重体干渉が無視できず, またIn含有量が低いため正確な分析値は得られなかった。
神奈川県内から採取した実環境試料から11.4~21.0μg/g (底質) , 6.94~14.7μg/g (下水汚泥, 飛灰, 浮遊粉じん) のGaが検出された。Inは底質, 粉じんからは不検出だった。汚泥及び飛灰ではInが検出されたが, Snによる同重体干渉が大きく, 正確な分析値は得られなかった。河川水 (15地点) 中のGa濃度は, <0.01~1.1μg/l, Inは<0.01~0.30μg/lであった。
本法の定量限界はGa, Inとも溶液中0.Olμg/l, 固体環境試料では0.1μg/gであった。