抄録
アンダーセンハイボリュームエアサンプラーで分級捕集した大気浮遊粒子について, 1-ニトロピレン (1-NP) および9種の多環芳香族炭化水素 (PAHs) を測定し, それらの粒径分布および季節変動を調べた。調査は2001年7~8月 (夏季) と2002年1~2月 (冬季) に, それぞれ3週間ずつおこなった。1-NPの定量には液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法 (LC/MS/MS) を, PAHsの定量にはガスクロマトグラフィー/質量分析法 (GC/MS) を用いた。1-NPの大気中濃度は夏季に4.17pg/m3, 冬季に30.2pg/m3と冬季に7倍程度高濃度であった。PAHsについては, PAHs総濃度で夏季に1.44ng/m3, 冬季に5.27ng/m3と1-NP同様に冬季に高濃度になる傾向が見られた。一方, これらの物質の粒径分布は夏季と冬季で大きな違いはなく, 1-NPについては夏季および冬季ともにおよそ80%が, PAHsについては夏季に70%, 冬季に80%近くが, 肺胞領域への沈着率が高い粒径1.1μm以下の微小粒子中に存在していることが明らかになった。