環境化学
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土壌中のダイオキシン類の濃度レベル
大崎 靖彦松枝 隆彦黒川 陽一
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1992 年 2 巻 3 号 p. 523-531

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抄録
ダイオキシン類 (ポリ塩化ジベンゾーp-ジオキシン: PCDDs及びポリ塩化ジベンゾフラン: PCDFs) による環境汚染状況を把握するために, 土壌中のPCDDsとPCDFsの濃度を測定した。次いで, 土壌中と大気中のPCDDs, PCDFs濃度の比較, 土壌の深さと濃度との関係, 土壌中の有機物とそれぞれの濃度との相関関係等を検討した。分析操作は次のとおりであった。採取した土壌を室内で風乾し, メタノールベンゼン混液でソックスレー抽出した。13C置換のPCDDs, PCDFsの内標準を添加後, 抽出液は水酸化カリウム溶液で洗浄し, 硫酸処理後, 硝酸銀シリカゲルカラム及び活性炭カラムにより精製した。前処理後の濃縮液はキャピラリーカラムを装着したガスクロマトグラフ高分解能質量分析装置に注入し, PCDDs, PCDFsの分析を行った。その結果の概要を以下に示した。 (1) 使用した検体にはダイオキシン類が検出され, 土壌中の濃度はtotal-PCDDsが0.08~22, total-PCDFsが0.01~2.5 (いずれもng/g, drybase) の範囲で検出され, 前者がかなり高い値であった。 (2) 土壌中PCDDsの中で各同族体の占める割合を比較すると, PCDDsでは8塩素化合物がその71%を占め, 次いで4塩素化合物が22%を占めていた。PCDFsでは8塩素化合物が最も高い割合 (35%) 占めており, 他の各同族体は13~19%の範囲の値を占めていた。しかしながら, 大気中で占める各同族体の濃度比は, 両物質とも概して低塩素化合物から高塩素化合物になるにしたがって減少傾向を示した (3) 土壌中のダイオキシン類の濃度は表土 (深さ0-5cm) が最も高く, 深くなるにつれて漸次減少傾向にあった。 (4) 表土中のダイオキシン類の濃度は表土中の有機物の量と比較的良好な比例関係にあった。
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