抄録
1970年代後半と1990年前後の低沸点有機塩素化合物の淀川および大和川水系, 大阪市内河川, 大阪湾での濃度レベルと分布の比較を行った。1970年代後半の淀川および大和川水系では, 流域に点在する高濃度発生源からの負荷が直接水系に反映されているのに対し, 1990年前後では流域の分布に偏りを生ずる高濃度発生源がなく本川の分布はほほ均一であった。大阪湾は周辺での都市活動によって生じた負荷全体を反映し, 個別の発生源からの偏りが平準化され, 各物質の濃度順位はほぼ測定年の生産量の順位に従った。
トリクロロエチレンとテトラクロロエチレンの生産量が横ばいで, 1, 1, 1-トリクロロエタンの生産量が急激に増加しているにもかかわらず, 1990年前後の水系でのこれらの濃度は1970年代後半に比べ極端に低い値を示した。これは基準値の設定とそれに伴う環境への放出量の減少によるためであると考えられた。1970年代後半と1990年前後の四塩化炭素とクロロホルム濃度に大きな変化は認められなかった。四塩化炭素はフロンの原料で, 環境への放出量そのものが小さいと考えられた。クロロホルムの使用に伴う環境への放出量は四塩化炭素と似かよっている。しかし, 水系での濃度はその生産量と放出量のわりに他の物質に比べ高い値を示し, 下水処理場からの負荷が無視できないことが明らかとなった。