環境化学
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イミノ二酢酸キレート (IED) 膜上捕集濃縮/ICP-AESによる環境水中金属元素の迅速同時分析
欧陽 通王 寧岩島 清栗山 清治古庄 義明
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1999 年 9 巻 2 号 p. 347-357

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抄録

イミノニ酢酸キレート膜を用い, 河川水および工場排水中の金属9元素を捕集濃縮する方法は, ICP-AESによる金属元素の分析に極めて有効であることが確認された。本法の50倍濃縮による検出限界はそれぞれ, Al0.024μg・l-1, Cd0.001μg・l-1, Co 0.003μg・l-1, Cu 0.002μg・l-1, Fe0.034μg・l-1, Mn0.009μg・l-1, Ni0.005μg・l-1, Pb0.0l1μg・l-1, Zn0.031μg・l-1, 定量下限値はそれぞれAl0.08μg・l-1, Cd0.004μg・l-1, Co0.008μg・l-1, Cu0.008μg・l-1, Fe0.11μg・l-1, Mn0.031μg・l-1, Ni0.018μg・l-1, Pb0.037μg・l-1, Zn0.10μg・l-1であった。本法を用いて容易に50~250倍の濃縮率が可能であり, 溶媒抽出法と比べて, 迅速, 簡便で, 多試料の同時処理に有効であることが明らかになった。実試料への9元素の添加回収率は良好であり, 幅広い濃度範囲において精度のよい分析ができた。
また, 本法を用いて, 予備ろ過などの前処理方法と本法の組合せにより環境水中に溶存する金属元素の存在形態別の濃度分布状況を明らかにすることができた。なお, 本法を用いて有機物が溶存する環境水中の微量金属の全溶存態濃度を求める際には, 試料を予め適切に酸分解処理する必要があることがわかった。今後, さらに, 溶存する金属元素の形態別分析と有機物種の分析結果における係わりを明らかにすることによって, 環境水中の金属元素の挙動の解明に有用な情報を提供することが期待される。

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