日本肘関節学会雑誌
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Ⅳ.成人骨折・脱臼
上腕二頭筋腱の一時的Z型切離を行い骨接合術を施行した橈骨近位骨幹部粉砕骨折の1例
土谷 正彦小泉 雅裕
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2016 年 23 巻 2 号 p. 206-208

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抄録

 橈骨に対するHenry進入法は橈骨全長を展開することが可能であるが,橈骨近位骨幹部に粉砕を伴う場合,上腕二頭筋腱の存在が視野の妨げや整復阻害因子となる.今回,このような骨折に対して上腕二頭筋腱をZ型に一時的に切離し,骨接合術を施行した.症例は34歳,男性.橈骨頚部骨折を伴う近位骨幹部粉砕骨折を認めた.手術の際,同部の展開にはHenry進入法を用いたが,上腕二頭筋腱付着部を含めた高度粉砕骨折であり,視野の確保と正確な骨片整復のため一時的に同腱を切離して手術を行った.この腱は修復時に過緊張とならない様に,あらかじめZ型に切離し,骨折の内固定後に適度な緊張下で縫合修復を行った.本症例の経験から,同様の症例に対しては上腕二頭筋腱を一時的に切離することで手術操作が容易となり,またZ型に切離して修復時の緊張を緩めることで,術後拘縮や前方不安定性を軽減することが可能と考えられた.

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© 2016 日本肘関節学会
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