2016 年 23 巻 2 号 p. 39-41
上腕二頭筋腱遠位部皮下断裂の1例を報告する.44歳男性.重量物拳上時,断裂音と左上腕痛を自覚した.上腕中央屈側に可動性のある弾性軟の皮下腫瘤を触知,肘関節屈側の皮下出血と圧痛があり,前腕回外力MMT4と低下していた.エコー,MRIで,上腕二頭筋腱遠位部断裂を認め,手術を行った.前方進入で展開,腱は橈骨粗面で断裂し腱鞘内に退縮していた.断端腱を橈骨粗面にsuture anchorを用い縫着した.術後肘関節装具使用し,4週まで伸展-90°に制限し徐々に拡大した.術後6か月時,可動域に左右差なく,筋力はMMT5に改善し原職復帰した.上腕二頭筋腱遠位部断裂は重量物を肘関節90°屈曲で持った際に起こりやすい.上腕二頭筋腱断裂のうち遠位腱断裂は3%,保存的治療では肘屈曲力・前腕回外力が低下し,また,壮年期の肉体労働者に多いため手術療法が選択されることが多い.自験例も手術療法を選択し良好に経過した.