抄録
Snapping triceps syndromeの2例を報告する.症例1: 25歳男性.尺骨神経脱臼を伴う肘部管症候群に対して皮下前方移動術を受けたが,肘の弾発が残存し尺骨神経障害が進行したため1年半後に再手術となった.肘屈曲で三頭筋内側頭が内側上顆へ乗り上げて弾発し尺骨神経を圧排していた.弾発が消失するまで内側頭を切除した.症例2 : 28歳男性.尺骨神経脱臼を伴う肘部管症候群に対して手術を施行した.皮下前方移動後も内側頭の弾発が残存し,内側頭の部分切除を追加した.両症例とも肘の弾発は消失し,手のしびれは改善した.snapping triceps syndromeは三頭筋内側頭の弾発が関与する尺骨神経脱臼/障害である.若年男性に多く伝導速度の低下は軽度である.身体所見による尺骨神経脱臼と三頭筋弾発の鑑別は困難で,術中に三頭筋の弾発を必ず確認し,弾発する場合は内側頭の部分切除が必要である.