抄録
肘頭後方脱臼骨折(posterior olecranon fracture-dislocation,POFD)10例の損傷形態と治療成績を調査した.尺骨鉤状突起骨折を全例で認め,橈骨頭骨折や近位橈尺関節の脱臼/亜脱臼,橈骨切痕骨折,回外筋稜骨折,外側尺側側副靭帯損傷など様々合併していた.段階的手術により複数のアプローチを組み合わせて対応することで概ね良好な治療成績が得られていたが,肘関節と前腕の可動域制限は必発であった.現時点でわれわれが提唱する治療戦略は,橈骨切痕後方部損傷や回外筋稜骨折を合併している場合はuniversal posterior approachを選択し,尺骨鉤状突起骨折に対して前方骨性支持が必要な場合は前方アプローチによるバットレスプレート固定を施行する,である.