生態心理学研究
Online ISSN : 2434-012X
Print ISSN : 1349-0443
特集2: 生態心理学とリハビリテーションの融合
熟練ドラマーの正確な演奏はどのように実現されるのか─床反力データを用いた姿勢制御に関する検討─
谷貝 祐介古山 宣洋三嶋 博之
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2018 年 11 巻 1 号 p. 25-26

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抄録

ドラム演奏では,正確な演奏を維持することが要求される.正確な演奏を実現する熟練したドラマーの身体動作には,一体どのような特徴があるのだろうか.本研究では,ドラム熟練者(N=3)と初心者(N=4)の違いを明らかにした.実験課題は,ドラムセット(ハイハット,スネアドラム,バスドラム)を用いた 8 ビート課題とし,演奏時の打圧データ,床反力中心データ(CoP データ)を計測した.計測したデータを用いて,演奏の正確性や強度を評価するためのパフォーマンスの分析と,その背景にある身体動作の分析を実施した.分析の結果,熟練者の演奏パフォーマンスは,出力が大きく,ばらつきも小さいことが示された.身体動作では,熟練者の方が大きく,運動方向のばらつきも小さいことが示された.ドラム演奏(i.e., 8 ビート課題)は,上肢や下肢,全身の複雑な運動から成り立つ.本研究により,大局的な姿勢(例えば,運動方向を一定に保つような姿勢)を維持することや,身体を楽器に向けて適切に定位させるなどの姿勢制御が,複雑な身体動作を取りまとめ,正確な演奏を支えていた可能性が推察された.

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© 2018 日本生態心理学会
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