生態心理学研究
Online ISSN : 2434-012X
Print ISSN : 1349-0443
特集2: 生態心理学とリハビリテーションの融合
帰り道はなぜ短く感じる?─リターントリップエフェクトへのエコロジカル・アプローチ─
阿部 廣二山本 敦古山 宣洋
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2018 年 11 巻 1 号 p. 27-30

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抄録

往復の旅程において,往路よりも復路のほうが短いと感じる,リターントリップエフェクトと呼ばれる現象がある.本稿では,まずリターントリップエフェクトの発生メカニズムについて,先行研究のレビューを行った.その後,先行研究の問題点を指摘した上で,生態心理学を理論仮説として,リターントリップエフェクトの生成メカニズムを理論的に検討した.その結果,1)往路と復路において同一対象であっても知覚される面が異なる可能性があること,2)表面/裏面のどちらからでも同一対象であることが特定できる付着対象であるランドマークの探索が失敗したとき,もうここか/まだここかといった経験をする可能性があること,3)視角の制約や環境内の対象によってもたらされるランドマークの遮蔽のタイミングが,往路と復路で違う可能性があり,復路において早期の段階でスタート付近のランドマークが知覚されたときもうここかといった経験をする可能性があることが示唆された.最後に今後の実証研究の方向性として定性的分析,および実験研究の可能性が示された.

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© 2018 日本生態心理学会
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