2018 年 11 巻 2 号 p. 22-25
本稿の目的は,生態心理学における直接知覚と間接知覚との関係を,パースの批判的常識主義の観点から発展的に統合することにある.生態心理学の直接知覚に関する主張は,ギブソンのみならずほとんどの生態心理学者が共有する生態心理学のドクトリンである.他方で,生態心理学における間接知覚の働きは,ギブソン自身が言及しているにもかかわらず,少なくとも生態心理学の外部の研究者たちはほとんど注目していないし,直接知覚と間接知覚がどのように関係しているかはかならずしも明白ではない.そこで本稿では,生態心理学への不毛な批判を解消するために,生態心理学の源流にあるプラグマティズム,特にパースの批判的常識主義の観点から検討することで,両者を統合した生態学的知覚論の構築をめざす.