2018 年 11 巻 2 号 p. 20-21
これまでの対人運動協調に関する研究は, 二者の視覚的結合を相対位相のヒストグラムにより推定してきた. しかしこの方法では, 相対位相時系列データの背後にある系が持つ潜在的なダイナミクスは不明のままである. そこで本研究では, 対人協調における視覚的結合を結合振動子の位相モデルにより検出することを目的とした. 被験者は向かい合って立った状態(対面条件), もしくは背中合わせで立った状態(背面条件)で, リズミカルな膝の屈伸運動を行った. その結果, 対面条件では二者の相対位相が同位相へと引き込まれた. 背面条件では, 二者の引き込みが生じることはなく, 両者のリズムがずれることで位相逸脱が観察された. 位相モデルにより推定した二者の結合強度は, 背面条件ではほぼ0 であり, 結合が存在しないことが示唆された. 一方, 対面条件では結合強度が0 と有意に異なり, 結合が存在することが確認された. 今後本モデルにより, 二者の相対位相を生み出すダイナミクスそのものを評価していくことで, 二者間の情報学的な結合が解明されることが期待される.