生態心理学研究
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アニメーションと生態心理学と「思想」
佐分利 敏晴
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2023 年 15 巻 1 号 p. 87-95

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抄録

 アニメーションに作者や監督が込めた意図を哲学や文学で論考すれば,「思想」と呼べるものとなろう.それは,意図の傾向から現れる制作者自身の性格や特質であり,表現の動機である.しかしこれらに関する論考は,描かれた情報を臨床心理学における「箱庭療法」のように「解釈」したものである.一方,生態心理学で扱うのはあくまでも環境に埋め込まれた情報である.表現媒体に人間が付けた痕跡を心理士が「解釈」したものを「思想」と呼ぶのならば,それは生態心理学の枠組みで扱われるものではない.ギブソンが述べるところの「知覚の二重性」で想定されているような2つの「一次情報」,スクリーンそのものと,映し出されている光学的配列以上の意味があるわけではない.ただし,アニメーション制作者がこの表現方法について「何でも表現することができる」という確信については,これを否定すべきではない.

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© 2023 日本生態心理学会
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