2024 年 16 巻 1 号 p. 29-50
本実験の目的は,重さの知覚における繋留効果について,特定の刺激系列(ブロック)に含まれる単一の繋留刺激が,異なる刺激系列(ブロック)にも影響を及ぼすという持ち越しの効果を,順応水準理論の観点から検討することである.重量の分布が共通する刺激系列に対して,異なる重量の繋留刺激を挿入した2条件を独立変数として設定し,各条件に対する重さの順応水準を従属変数として,ABAデザインに基づき測定した.その結果,第1ブロックから第3ブロックまでの順応水準は,それぞれ有意に異なることが明らかとなった.このことは,第2ブロックで呈示した繋留刺激が,第3ブロックおいても影響を及ぼすという持ち越しの効果が生じたことを示している.つまり,繋留刺激は,その効果を捉えるために設定された特定の刺激系列のみならず,後続する刺激系列にも影響を及ぼし得るのである.