生態心理学研究
Online ISSN : 2434-012X
Print ISSN : 1349-0443
研究論文
解かれる謎をつくる:ミステリ小説70作品の分析と作家へのインタビューを通じたトリックと解明方法の関係
齊藤 有希田内 優花滝 りりか関 博紀
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2024 年 16 巻 1 号 p. 51-73

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抄録

ミステリ小説の基本的構造であるトリックと解明方法との関係を取り上げ,その関係がどのように考案されているかを,ミステリ小説70作品を対象とした作品分析と,ミステリ作家へのインタビュー調査を通じて確かめた.作品分析では,トリックと解明方法に関する4つの設定を定め,それらの組み合わせからみた頻出パタンと,各設定を軸にした際の相関ルールを抽出した.インタビュー調査は,高い評価を得ているプロの作家1名を対象として,事前に準備した3項目計16の質問を用いて実施した.得られた結果から,ミステリ作家は,1)個々の設定,2)設定の組み合わせ, 3)設定同士の連動的関係,という少なくとも3つの水準でトリックと解明方法との関係を検討していることが示唆された.この結果は,ミステリ小説を創作する際に,トリックと解明方法との関係から生まれる全体的なバランスが検討されていることを示唆しており,創造的活動にみられる高次のバランスとの関係が考察された.

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© 2024 日本生態心理学会
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