本稿では, 著者らが開発している体性感覚型バイオフィードバック(BF)システムの研究経緯を概観するとともに, 生態心理学的観点からその意義やリスクについて再考した.感覚代行技術は, 失われた感覚を補うためにテクノロジーを活用するものである.特に, 著者らが開発した体性感覚型BFは, 脳損傷患者の身体感覚の減衰を人工的な振動刺激で補完し, 姿勢制御や歩行能力の改善図ろうとするものである.工学的な意味での感覚代行は, 入力された物理的な情報を異なる形式に符号化し呈示するため, 身体内部の情報処理過程として扱われることが多い.しかしながら, ダイナミックな運動行動を対象とした本システムは, 知覚行為循環を通して環境との関係性を再構築するという側面を持つ.そこで本稿では, 感覚代行の研究史およびこれまでの研究開発の経緯について概説するとともに, 患者と環境との相互作用を改善するための手段として本技術を捉えなおし, 生態心理学的観点からその意義やリスクについて再考した.