2026 年 18 巻 1 号 p. 97-106
今日の生態心理学は,社会的実践や技術習得などにまでその射程を広げているが,その数理的基盤は古典的な幾何学的枠組みに留まっている.本発表では,この課題への処方箋として,現代数学における圏論が持つ可能性を検討する.一方でJ.J. Gibsonの生態光学は,幾何学においてF.Kleinが「エアランゲン・プログラム」として提案した「対象をある変換群のもとで不変の性質によって規定する」という方法論を知覚と運動の理論へと応用し,生態心理学もそれを継承している.他方で圏論は,この方法論の射程を幾何学以外へと拡張する「エアランゲン・プログラムの延長」として20世紀半ばに提案され,あらゆる対象を,それらがもつ「射」のネットワークとしての「圏」から特徴付ける理論体系を発展させてきた.こうした歴史的パラレル性を踏まえ,本発表は,生態心理学の「エコロジー」への眼差しを体系化するための枠組みとしての圏論の可能性を議論する.