2016 年 84 巻 p. 1-12
本研究では,社会科教育実践者と学習指導要領の関係性の問題を取り上げ,学習指導要領に依存した社会科授業からの改善方略について提言することを目的とした。最初に,学習指導要領に依存した社会科授業を,学習者の「状況」が考慮されず,学習者が学ぶ意義を感じさせない社会科授業と性格づけ,学習者の外的状況と内的状況に着目した改善観点を示した。次に,改善観点に応じ,「状況」が影響する授業の課題領域を設定した上で,外的状況から教師自身が授業課題を自覚する段階と学習者の内的状況から授業改善へ至る段階といった二段階の改善手順を明らかにした。そして,授業改善の手順に応じ,現代の学習者の社会的文脈における課題をメディアの学習者への関与であることを指摘し,教科書メディアの限界性を踏まえた上で,内的状況の改善を図る教科書活用の視点を明確化し,視点に応じた教科書を相対化する改善授業を具体的に提案した。