本研究は,異なる国や民族に由来する多様な意見の背後にある価値観を比較・検討し,自らのもつ価値観を疑いながら,社会全体としての政策を自立的に考案する中で,価値観の違いを柔軟に調整できるグローバル市民の育成を目指した社会科の授業構成の原理と方法を,単元開発とその実践分析を通して示そうとするものである。グローバル市民の育成を目指した先行研究として,国家間の対立・紛争を緩和・解消しようとする国際理解教育として位置づけられるものと,多人種多民族によって構成される国家において,多文化社会の構築を目指した多文化教育として位置づけられるものが挙げられる。これらは,政治や経済のボーダレス化がさらに加速している現代社会が求めるものとは言い難い面がある。
本研究では,社会科教育で主張されてきた価値調整学習論を手がかりに,グローバル市民の育成を目指した社会科単元を開発し実践を行った。実践のデータの収集・分析を通して,開発単元が,生徒に自国とは異なる社会のあり方・政策と,その背後にある価値観を吟味させ,価値観の変容を促すことができることを明らかにした。授業を受けた生徒の決定の変化から,生徒は自分の価値観を見直し,多様な人々との共存を目指して,異なる価値観を調整できるようになっていたことが明らかになった。このように,本研究で明らかにした原理と方法は,現代社会が求めるグローバル市民の育成に資するものとなっている。
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