2019 年 90 巻 p. 37-48
「社会認識を通して市民的資質を育成する」ことを目標とする社会科に位置づく社会科歴史の授業においては,歴史学等の研究成果を踏まえながら児童に自ら歴史を描かせることが重要である。本研究の目的は,そうした歴史授業を構成する授業方法論としてゲーミングシミュレーションの手法を用いた教材を開発し,その有効性を明らかにすることである。検証にあたっては,同一内容について異なる2つの方法論を用いて授業を行い,その結果を比較することで教材の質的な違いを明らかにすることを試みた。 検証の結果,授業方法の違いによって学習者が獲得する歴史認識には質的な違いがあること,そしてゲーミングシミュレーション教材は学習者を当時の人々の立場に立って歴史を捉えさせ,より強く自ら歴史を描かせうる可能性があることを見い出すことができた。
本研究の成果は,ゲーミングシミュレーションが「過去の人々が見た未来との対話」を可能とする手法であることを示したこと,またこれを従来の歴史授業における有効な方法論の一つである「追体験」の方法を発展・継承するものとして位置づけることができたことである。