日本中央競馬会競走馬保健研究所報告
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競走馬におけるWPW症候群の1例
千田 哲生天田 明男
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1967 年 1967 巻 4 号 p. 129-136

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抄録

 1.競走馬の心電図学的研究を行うため外見上健康と思われるウマの心電図を記録した際偶然WPW症候群を示すウマを発見した。 2.WPW症候群は2才時の11,月に行なつた第1回検査で発見された。その後4才時2月までの間に計4回の心電図検査を行なつたがWPW型心電図は毎回観察された。 3.安静時におけるWPW型心電図の出現頻度は一定でなかつたが年令の進行とともに増大する傾向がみられ,また約10分間の速歩運動負荷により出現頻度は増大した。 4.WPW型心電図は連続して,または正常型心電図と交互に出現した。 5.A-S誘導心電図PQ間隔の平均値は正常型では0.30-0.50秒で,実験の後半には第1度房室ブロックの存在がうかがえた。これに対しWPW型のPQ間隔は0.24-0.27秒と短縮した。 6.A-S誘導心電図のQRS群持続時間は正常型の0.08~0.11秒に対しWPW型では0.16~0.20秒と延長した。 7.A-S誘導心電図のQT間隔は正常型の0.48~0.56秒に対しWPW型では0.53~0.64秒と延長した。 8.A-S誘導心電図のΩRS群波形は正常型のrS型またはQS型に対しWPW型ではRs型またはRS型であつた。WPW型の心電図ΩRS群波形は安定していることもあり,拍動毎に徐々に変形し正常型に近づくこともあつた。 9.A-S誘導心電図のT波波形は正常型の陽性波の大きい-+型または単相性陽性波に対しWPW型では陰性波の大きい-+型2相性波であつた。 10.WPW症候群にしばしば伴なつて出現するといわれる発作性心臓頻拍や心房細動の発症は,本例においては観察されなかつた。

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