日本中央競馬会競走馬保健研究所報告
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Succinylcholine Chlorideがウマの心臓機能に及ぼす影響について
天田 明男吉田 慎三千田 哲生内野 富弥
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1967 年 1967 巻 4 号 p. 88-106

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抄録

 succinylcholine chloride(以下SCCと略す)がウマの心臓機能に及ぼす影響を知る目的で,健康成馬12頭を用い,SCC投与量により0.05mg,0.10mg,0.17m9,0.30mg,atropine前投薬後0.17mg(いずれも体重1kg当り投与量)の5群に分け,のべ27例の実験を行なった。SCCは頸静脈内に投与し,投与からcasting,回復にいたる全経過の心電図をテレメーターにより連続記録した。実験結果はつぎのとおりである。1.SCC投与群の倒れるまでの時間は6~35秒で投与量の増加にしたがって短縮する傾向があった。なお0.05mg投与群では5例のうち2例は倒れなかった。また横臥の時間は1分59秒~28分31秒で投与量の増加とともに延長する傾向を示した。2.0.05mg投与群の一部,および0.10mg,0.17mg,0.30mg投与群のすべての例で投与後17~52秒から複雑な不整脈が出現し,46秒~6分45秒間持続した。この期間は投与量が多い程長い傾向を示した。3.上記不整脈は心電図学的に房室ブロック,補充収縮,期外収縮,発作性頻拍,心室粗動などの組合せによる複雑なもので,とくに心室粗動の出現は一過性であったが,投与量の増加にしたがってその出現例がました。また,これら不整脈はatropine前投薬群では全く出現しなかった。4.不整脈消失後,大多数の例で洞性頻脈が出現したが,最大心拍数は分当り124~234で,その数は投与量と無関係であった。

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