1981 年 1981 巻 18 号 p. 110-118
馬ウイルス性動脈炎の実験感染馬は, 全身性に種々の急性症状を呈したが, 40℃以上の発熱, 眼結膜の充血, 後肢球節の浮腫, そしてリンパ球減少による白血球減少症が特徴的であった. 臨床所見はこれまでの報告とほぼ一致したが, 流涙および眼瞼の浮腫は認められず, 新たに黄色血清様鼻汁の漏出が4頭中2頭に観察された. ウイルスは鼻腔以外に直腸, 腟の各スワブから発熱期に分離され, これらの排泄物は感染源になると思われた. 血液中のウイルスは血清中和抗体の出現に伴って血清から消失したが, 白血球層からはウイルス接種後36日経過した例からも分離された. また接種後5日目に41.4℃の発熱を示した例の体液や組織中に2.3から7.2 log10 pfu/mlまたはg, さらに接種後36日目の回復馬の肺からも1.2 log10 pfu/gのウイルスが分離回収された. 発症後治癒し, 長期間経過した馬の白血球層や肺からウイルスが分離されたことから, 先に報告された腎以外の組織にも持続的にウイルスが潜在する可能性が示唆された.