日本中央競馬会競走馬総合研究所報告
Online ISSN : 1884-4626
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1981 巻, 18 号
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  • 兼子 樹広, 桐生 啓治, 及川 正明, 吉原 豊彦, 長谷川 充弘, 富岡 義雄, 竹内 啓, 臼井 和哉
    1981 年1981 巻18 号 p. 1-7
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    競走馬の球節部にxeroradiography撮影を試みた結果, 通常のX線写真像では不鮮明かあるいは診断不可能な限局性骨小病巣を明瞭に見出すことができた. この結果からxeroradiographyは, 臨床獣医学の分野において, 骨の小病巣あるいは初期変化の診断や骨内部構造の観察に著しく有用であることが示唆された.
  • 1. 尺骨頭と踵骨の化骨過程について
    吉田 光平, 上田 八尋, 長沢 良信, 益満 宏行, 藤井 良和
    1981 年1981 巻18 号 p. 8-18
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    Ossification changes in the olecranon tuberosity and the tuber calcaneus were examined radiographically on 593 Thoroughbreds 0 to 24 months of age. A method was devised to assess the stage of development by recording information on ossification centers and growth plates. The standard radiographs were corrected and added to the skeletal score. The results obtained were as follows: (1) At the age of 0-3 months the olecranon tuberosity and the tuber calcaneus varied in deformity. (2) At the age of 10-17 months no deformity was defined in the tuber calcaneus. (3) The olecranon tuberosity at 24 months of age was not different in shape from that at 21 months. (4) A union was completed between the tuberosity and the body of the calcaneus in 64% of the horses 24 months old. (5) The bone maturity process could be divided into 9 stages at the olecranon tuberosity and into 10 stages at the tuber calcaneus of the horses 24 months old to complete the union. (6) The stage of development was replaced by the skeletal score and evaluated to this score. (7) The skeletal score curve at 0-7 months of age presented a steep slope. (8) The skeletal maturity progress was slow at 8, 9, 12, 14-16, 17, 18, 19, 20 and 22 months of age. (9) The skeletal score curve continued to the end of the experimental period.
  • 益満 宏行, 上田 八尋, 吉田 光平, 長沢 良信, 藤井 良和
    1981 年1981 巻18 号 p. 19-27
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    Bone age was surveyed in a total of 470 foals and young growing horses ranging from 0 to 24 months of age. When 2 820 radiographs were obtained, 181 of them were found to show radiographic changes. It is the purpose of this report to present some features of these changes together with etiological discussion. The distribution of the 181 cases of radiographic changes was surveyed. In addition, 17 cases were traced as required. As a result, it was estimated that a longitudinal shadow picture at the apical site of the proximal sesamoid bone, a shadow picture like avulsion at the apical site of the proxical sesamoid bone, a shadow picture like avulsion at the caudal site of the ossification center of the calcaneal bone and a shadow picture like bone cyst at the ossification center of this bone were physiologic pictures found in the growing process. On the other hand, it was estimated that osteoporosis of the proximal sesamoid bone, luxurious callus at the basal site of this bone, exostosis at the distal lateral site of the 3rd metacarpal bone, osteoporosis of this bone and the 1st phalanx, epiphysitis at the distal medial site of this bone, epiphysitis at the distal medial site of the radius, and luxurious callus at the proximal dorsal site of this bone and at the dorsal site of the tarsal bone were abnormal changes of bone disease.
  • 正常歩様馬の床反力
    上田 八尋, 仁木 陽子, 吉田 光平, 益満 宏行
    1981 年1981 巻18 号 p. 28-41
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    馬の跛行診断を客観的に行うために, あるいは運動器疾患の原因を解明するためにフォースプレートを用い, 常歩あるいは速歩時に着地した肢に働く床反力を測定し検討した.
    フォースプレートはキスラー社製Z4852/C (60×90cm) を用いた. 測定項目は垂直分力 (Fz), 前後分力 (Fy), 左右分力 (Fx) と, さらに演算によって合力 (F), 力の作用点の軌跡 (ax, ay), 力の作用点における垂直軸周りのトルク (M'z) (ねじりの力), それに力線図 (リサージュ波形) が得られ波形として描かれる.
    常歩において, 垂直分力は前後肢ともに2峰性のパターンが得られた. そのピーク値は前肢において体重比56.2%と68.0%であり, 後肢においては48.6%と42.9%であった. さらに垂直分力波形には2つの小峰が認められた. 1つは最初のピークの前であり, 他の1つは第2のピークの後であった.
    前後分力は着地後, 前方分力としてピークを形成したあと0にもどり, 次いで後方分力としてのピークを形成した. そして, 前方分力と後方分力はほぼ等しい値であった. また, 前後分力の波形の中にも垂直分力の小峰に対応した小峰が認められた.
    左右分力は個体によって異ったパターンが見られ, 着地から離地までにいくつかの内外側へのピークを形成していた.
    速歩になると, 垂直分力は前後肢とも単峰性のパターンに変化し, そのピーク値は前肢において体重比105%, 後肢において92.8%となった. 前後分力は常歩時とほぼ同様のパターンを示したが, 前肢の前方分力と後肢の後方分力が常歩時より増加した. 左右分力は個体間の変動が大きく, 常歩と速歩による変化は見られなかった.
    力の作用点の軌跡 (ax, ay) は, 前後肢によってそれぞれほぼ一定したパターンを示し, そのパターンは関節の作用, 体重心の位置と関連があるように見られた. また, ねじりの力は個体差及び各個体の各肢ごとに相違があり, 肢勢, 歩様と関連性が強いと推察された. 力線図については, 着地時の衝撃波の影響が強く現われたが, 個々の馬の歩様を反映しているように思われた.
    測定結果から前肢は支持的な機能を, 後肢は推進力としての機能を持っていることが表わされている. また, 各波形は馬の歩様を忠実に示しており, 跛行診断などへの有用性が示唆された.
  • 上田 八尋, 吉田 光平, 長沢 良信, 益満 宏行, 藤井 良和
    1981 年1981 巻18 号 p. 42-48
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    生胎仔細胞と血清を採取するために, 馬の帝王切開手術を行った.
    症例は重半血種, 13歳, 体重630kgであった. 笑気, 酸素と少量のハロサンで気管内麻酔を行い, 仰臥位で正中線上を臍と乳房間20cmにわたって切開した. 摘出胎仔は20kgで, 心拍動, および自発呼吸が認められ生存を確認した. 子宮壁はNo. 0 Dexon®を用い連続レンベルト氏法で縫合し, 腹壁はNo. 1 Dexon®を用いて結節縫合を行った.
    術後約3ヵ月を経過したが臨床的には全く異常を認めず, 術後110日で交配された.
  • 西貝 正彦, 佐伯 百合夫, 石谷 類造, 乾 純夫, 成田 実, 浜崎 裕, 大島 卓也
    1981 年1981 巻18 号 p. 49-60
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    The clinical, bacteriological, macroscopic, and microscopic features of 25 dead foals with naturally occurring diseases were studied to determine the most prevalent cause of death in the Hidaka district of Hokkaido over a period from 1974 to 1977. The foals were composed of 22 Thoroughbred, 2 Arab and 1 Anglo-Arab foals which died from 1 day to 8 months of age. The specific causes of death found in this observation were larval migratory disease of Strongylus vulgaris for 7 cases, white muscle disease for 4, various bacterial infections for 7, equine infectious anemia for 3, and neonatal icterus for 1. The other 3 cases were involved in colitis with acute diarrhea, multifocal hepatic necrosis, and pulmonary edema with partially fetal atelectasis, respectively. These findings were discussed briefly.
  • 加納 康彦, 澤崎 徹, 松井 寛二
    1981 年1981 巻18 号 p. 61-72
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    慣用飼養条件下におけるポニーの, 妊娠後期, 分娩, 哺乳期および離乳に至る期間, および産駒の生時から離乳に至る期間の両者について, 定期的に, 血液を採取し, PCVとHb, Gl, TCh, PL, TGおよびFFA濃度を測定して, 正常値を得るとともに, これらの数値の変動要因について検討した.
    1. PCVとHb濃度は母馬では, 妊娠後期と哺乳期に減少した. 子馬では生れた直後から概ね60日齢に至るまで減少したが, 以後比較的急速に増加した.
    2. 母馬の血清TP濃度は, 妊娠後期から泌乳期の初期に減少した. 子馬の出生時, Glob濃度は低い値を示したが, 約60日齢以後直線的に増加した.
    3. 母馬の血清Gl濃度は, 分娩日に高く, 泌乳期間中も比較的高い値を示した. エネルギー要求と, 乳の前駆物質の補給がその要因の一部と考えられた.
    4. 母馬の血清TCh, PL, TG濃度は妊娠後期に比較的高い値を示したが, 泌乳期にはTG濃度は減少し, TCh, PLは比較的高い濃度を維持した. この差は, 乳の前駆物質となり得るTGが乳腺に取り込まれるためと考えられた.
    5. 子馬の血清TCh, PL, TG濃度は哺乳期に高く, 離乳後低下した.
    6. 母馬の血清FFA濃度は分娩日に急増した. これは, 分娩に要するエネルギーを, 脂質の動員によって補ったものと考えられた.
    7. 子馬の血清FFA濃度は, 103日齢に至る哺乳期間比較的高い値を維持した.
    8. 成長中のポニーの体尺, 体重を定期的に測定した. シェットランドポニーとその雑種の体型は, 輓馬に類似し, 軽種に比べて, 体高に対する, 体の幅と長さが大きかった.
  • 藤井 良和, 渡辺 博正, 上田 八尋, 山岡 貞雄, 仁和 勝広, 山本 剛
    1981 年1981 巻18 号 p. 73-83
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    Hydroxyproline (以下Hyp) はコラーゲンに特有なアミノ酸で, 血清中の遊離Hypは, 大部分骨コラーゲンに由来するとされている. ヒトでは発育異常, 代謝障害, 骨疾患等の診断に利用されている. 馬ではHypに関する報告は僅少であり, その臨床的意義については報告されていない. 今回われわれは, 馬の骨形成及び骨疾患診断の指標とすることを目的として, 血清中の遊離Hypの定量を試みた.
    測定法はStegemannらの変法に準拠し, 一部に改良を加えた. 除蛋白剤としては, 弱酸性であり良好な発色性を有する, スルフォサリチル酸を用いる方法に改良した. なお手技の簡略化のために, 本剤は溶液を分注及び凍結乾燥して用いた. 測定法は血清0.5mlを除蛋白し, 上清をクロラミン-Tで酸化した後, 過剰の酸化剤を過塩素酸で除去し, 発色にエールリッヒ試薬を用いて定量した.
    サラブレッド種の遊離Hyp量は, 加齢に伴い明らかな減少が認められ, 成長の各ステージにおけるバラツキが比較的少なく, 成長の程度を明確に表現すると考えられた. また血清中のALP及びP量は加齢に伴い減少するが, Hyp量と比較するとバラツキが大であった. 骨代謝の異常等と推測される発育不全, 化骨不全, 種子骨の粗鬆を呈する症例などにおいて, Hyp量の異常高値を有する多くの症例が認められた. また骨に関連すると考えられる腰萎, 慢性跛行, 骨膜炎などでもHyp量の上昇を示した数症例を認めた. なお, これらの症例におけるALP, Ca及びP量の異常は, ほとんど認められなかった. さらに競走馬 (3歳, 270頭) の春季と秋季にHyp量を測定し, 約15%に異常高値が認められた.
    以上の成績から, 血清中の遊離Hypは骨疾患の診断の指標として, ALP, Ca及びPに比較すると有用であり, さらに短時間に多検体の測定ができることから, 化骨不全のスクリーニングテストへの応用にも非常に有用であると考えられた.
  • 馬に対する病原性について
    鎌田 正信, 安藤 泰正, 福永 昌夫, 今川 浩, 和田 隆一, 熊埜御堂 毅, 田渕 英一, 平澤 澄, 秋山 綽
    1981 年1981 巻18 号 p. 84-93
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    ゲタウイルスの馬に対する病原性を調べるため, 自然感染発症馬の血漿由来の数株を細胞継代歴0, 2, 3, 10代目にて実験馬へ筋肉内接種した. 細胞継代0-3代目のゲタウイルスを接種された馬はいずれも接種後2ないし3日目に発熱し (2-6日目, 最高体温38.9-40.2℃), 後肢の浮腫 (3-7日目), 顎下リンパ節の腫大 (2-5日目) などの臨床症状を示したが, 発疹は認められなかった. また, 血液所見として急性時のリンパ球減少症 (1-5日目) および回復時の単球増多症 (5-10日目) が確認された. ウイルス血症は接種後1-5日目にかけて認められ, 中和抗体価は6日目から上昇して2週間目にピークに達した後2ヵ月目までほとんど低下せずに持続した. 一方, 細胞継代歴10代目のウイルスを接種された馬ではいずれも発熱, 浮腫, 顎下リンパ節の腫大などの臨床症状, 血液学的変化およびウイルス血症は認められなかったが, 軽度の発疹が2頭の頸部に認められた (7-10日目). また, 中和抗体は6ないし7日目に検出されたが, 抗体価は前述の例よりも低い傾向にあった.
    剖検馬の各臓器からゲタウイルスの回収を試みたところ, 4日目殺例では脾, 肝, 肺, 脊髄, 骨髄, 各種リンパ節にウイルスが分布し, そ径リンパ節と腋窩リンパ節で特に高いウイルス価が得られた. しかしながら, 13日殺例ではいずれの臓器からもウイルスは回収されなかった.
    以上の成績から, ゲタウイルス自然感染発症馬で認められた発熱, 発疹, 後肢の浮腫, 顎下リンパ節の腫大という臨床所見が実験感染によっても確認され, 馬に対するゲタウイルスの病原性が実証された. また, その病原性は株間において差が認められないが, 細胞継代によって減弱することが明らかとなった. さらに, ゲタウイルスの体内増殖の主な臓器はリンパ系組織ということが示唆された.
  • 1978年の美浦トレーニングセンターにおける臨床疫学
    福永 昌夫, 安藤 泰正, 鎌田 正信, 今川 浩, 和田 隆一, 熊埜御堂 毅, 秋山 綽, 渡辺 脩, 仁和 勝広, 竹永 士郎, 柴田 ...
    1981 年1981 巻18 号 p. 94-102
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    1978年に茨城県の美浦トレーニングセンター在厩馬に発生したゲタウイルス感染症の感染率は37.9%であった. 感染率は年齢, 性別で特に有意差は認められなかったが, 僅かに2歳馬に高い値が示された. 病気の伝播は不規則で遅く, ベクターの介在が示唆された. 発症馬722頭の中で590頭が発熱し, うち230頭は発熱のみを呈した. 発熱馬の106頭は発疹, 103頭は肢の浮腫, 151頭は発疹と浮腫をそれぞれ伴って観察された. 一方, 132頭は無熱に経過し, うち78頭は発疹, 20頭は肢の浮腫, そして34頭は発疹と浮腫を併発した. 発熱の期間は3-8日で, 多くは単峰性, そして二峰性の熱型を示す例も僅かに認められた. 発疹は主として頸部, 肩部, 殿部に現われ, 大きさは直径3-15mmであった. 顎凹リンパ節の腫脹は後肢の主として球節の浮腫と同様にしばしば認められ, いずれも非炎症性であった. 96%の発症馬は1週間以内に回復したが, 発疹と浮腫を伴った発熱馬は14日を要した. 発症中に軽度な貧血が認められたが, 急性期には中等度のリンパ球減少症が観察された.
    発症馬の唾液から分離された6株を除き, 鼻腔スワブから分離された4株, 脊髄液から分離された1株のウイルスは血漿から分離された62株のウイルスと同様, ゲタウイルスと同定された. ゲタウイルスは発熱時に採取された血漿の50%から分離されたが, 発熱後4日目までは僅かの例から分離された.
  • 杉浦 健夫, 安藤 泰正, 今川 浩, 熊埜御堂 毅, 福永 昌夫, 鎌田 正信, 和田 隆一, 平澤 澄, 秋山 綽
    1981 年1981 巻18 号 p. 103-109
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    毎年夏から秋にかけてトレーニングセンター (トレセン) および競馬場で発生している不明発熱疾病の原因を解明するために, 1979年の日本国内各地より集収した軽種馬の血清について, ゲタウイルスの血清疫学調査を行なった. その結果, ゲタウイルスがその原因の1つであることが明らかとなった. 特に, 栗東トレセンでは, 7月から10月に発生した発熱疾病馬136頭のうち, ゲタウイルスによるものは50頭 (約40%) であった. 1979年のゲタウイルスの流行は, 栃木県那須郡の生産牧場, 宇都宮育成牧場, 東京競馬場, 美浦トレセンおよび栗東トレセンにおいて, 7月から9月にかけて認められた. しかし, 日高育成牧場および宮崎競馬場においては, 認められなかった. 美浦トレセンにおける1979年の原因不明の発熱疾病馬およびゲタウイルス感染馬の総数は, 栗東トレセンの同期および美浦トレセンにおける1978年のそれらよりも極めて少ないものであった. その原因は, 1978年のゲタウイルスの流行および1979年に行なわれたゲタウイルス不活化ワクチンの野外試験により抗体を保有する馬の数が多かったこと, および広範囲に行なわれた消毒剤および殺虫剤の散布による環境の浄化の結果と考えられる.
  • 福永 昌夫, 今川 浩, 田渕 英一, 秋山 綽
    1981 年1981 巻18 号 p. 110-118
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    馬ウイルス性動脈炎の実験感染馬は, 全身性に種々の急性症状を呈したが, 40℃以上の発熱, 眼結膜の充血, 後肢球節の浮腫, そしてリンパ球減少による白血球減少症が特徴的であった. 臨床所見はこれまでの報告とほぼ一致したが, 流涙および眼瞼の浮腫は認められず, 新たに黄色血清様鼻汁の漏出が4頭中2頭に観察された. ウイルスは鼻腔以外に直腸, 腟の各スワブから発熱期に分離され, これらの排泄物は感染源になると思われた. 血液中のウイルスは血清中和抗体の出現に伴って血清から消失したが, 白血球層からはウイルス接種後36日経過した例からも分離された. また接種後5日目に41.4℃の発熱を示した例の体液や組織中に2.3から7.2 log10 pfu/mlまたはg, さらに接種後36日目の回復馬の肺からも1.2 log10 pfu/gのウイルスが分離回収された. 発症後治癒し, 長期間経過した馬の白血球層や肺からウイルスが分離されたことから, 先に報告された腎以外の組織にも持続的にウイルスが潜在する可能性が示唆された.
  • 今川 浩, 安藤 泰正, 杉浦 健夫, 和田 隆一, 平澤 澄, 秋山 綽
    1981 年1981 巻18 号 p. 119-128
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    ロタウイルスに感染した仔馬の糞便から, 培養細胞を用いてウイルス分離を試みた. その糞便は英国動物病研究所 (Institute for Reasearch on Animal Diesase) のJ. C. Bridger博士から分与された. 糞便ろ液を等量の4μg/mlのトリプシンを含んだ液と混合した. その混合液をMA-104 (Macacus rhesus monkey kidney) 細胞に接種し, 2μg/mlのトリプシンを加えた維持液の中で培養した. その結果, 明瞭な細胞変性をともなってウイルス (BI株) が分離され, そしてその分離ウイルスはひきつづいて細胞継代が可能であった. 回転培養におけるウイルスの増殖は静置培養より良好であった. 特に, 初代細胞継代におけるウイルスの増殖は回転培養の影響を強く受けた. 電子顕微鏡観察では, 感染細胞の培養液を濃縮した液の中に, 特徴的なロタウイルス粒子が検出された. また, 抗牛ロタウイルス (NCDV) 血清から作製した螢光抗体液で染色した感染細胞に, 明瞭な特異螢光が観察され, 分離ウイルスはロタウイルスと同定された. 交叉中和試験において, 分離ウイルスはNCDVと交叉しなかった. これらの結果から, 糞便に含まれる馬ロタウイルスはトリプシンでウイルス浮遊液を処理し, そして維持液にトリプシンを加えることによって, MA-104細胞において容易に分離できることが明らかになった.
  • 後藤 仁, 恒光 裕, 堀本 政夫, 清水 亀平次, 浦沢 价子, 古屋 宏二, 浦沢 正三, 大石 秀夫, 池本 安夫
    1981 年1981 巻18 号 p. 129-135
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    1973年から1979年にわたって北海道各地で採取した馬血清について, ロタウイルスに対する補体結合 (CF) 抗体価を測定し, 本ウイルスの伝播様相を血清学的に検討した.
    1. 十勝地区では農用馬44頭中32頭 (72.7%), 日高地区では軽種馬63頭中36頭 (57.1%) および宗谷地区では農用馬39頭中28頭 (71.8%) が, それぞれCF抗体価1:4-1:32を示し, 抗体保有率は時期, 地域および馬の種類によって著しい差異はみられなかった. また, CF抗体の年齢別保有率では, 1-9歳馬で50-65%を示したが, 以後年齢とともに上昇して19-27歳馬では91%に達した.
    2. ロタウイルスに対する母子移行のCF抗体は, 生後1-2週齢では母馬の血中抗体価とほぼ同一レベルを保持したが, 2-3ヵ月齢では完全に消失した. しかし, 5-8ヵ月齢になると, 再びCF抗体価1:4-1:32を示す子馬が多くみられ, この時期に本ウイルスの初感染をうけたものと推測される.
    3. 同一個体馬のCF抗体価の変動では, 1976年7-8月と10-12月間で4倍以上の有意上昇を示したものは全くみられず, 逆に下ったものが51頭中2頭 (3.9%), これに対して1976年10-12月と1977年3月の間では42頭中4頭 (9.5%) が上昇したのに反し, 抗体価の下降したのは僅かに1頭 (2.4%) であった. すなわち, ロタウイルスは, 夏から秋よりもむしろ冬から早春にかけて, 馬の間を伝播する傾向がみられた.
  • 抽出-螢光法の検討
    倉兼 英二, 天田 明男
    1981 年1981 巻18 号 p. 136-140
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    馬における抗不整脈薬キニジンの体内動態を研究するためには, キニジン特異性の高い定量法が必要である. 最近, ヒトにおいてキニジン特異性の高い螢光法として注目されているCramérらの方法 (抽出-螢光法) が馬においても有用であるかどうかについて検討した. まず, 従来から用いられてきた大石らの方法 (沈殿-螢光法) と抽出-螢光法とによって同一試料の定量値の比較をした. その結果, 両法による測定値の相関はきわめて高かった (r=0.943, P<0.001) が, 沈殿法では抽出法の2倍以上の高い値が得られた. これはヒトでの報告にほぼ一致した成績であり, 沈殿法ではキニジン代謝産物をも合せて測定することによるものと考えられた. すなわち, 馬においても, 抽出法の方が沈殿法よりキニジン特異性が高いものと推察された. そこで抽出法のキニジン特異性を検討するために, 同一試料を抽出法と高速液体クロマトグラフ法で測定した. その結果, 両法による測定値の相関はきわめて高く (r=0.975, P<0.001), しかも両法による測定値はほぼ1:1の関係が認められた. 以上の成績から, 抽出-螢光法は馬においてもキニジン特異性が高く, 馬におけるキニジンの体内動態を検討するうえで十分に有用な定量法であると考えられた.
  • 桐生 啓治, 兼子 樹広, 及川 正明, 吉原 豊彦, 長谷川 充弘, 富岡 義雄
    1981 年1981 巻18 号 p. 141-147
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    安静時不整脈を示さなかった馬19例について, 心房における類プルキンエ線維の分布及び心房並びに心臓外心臓神経における病理組織学的変化を探るために, 顕微鏡的観察が行われた. 類プルキンエ線維は1例を除く全例の両側心房にみられた. 1例のみは右心房のみにおいてみられた. 19例中, 4例に心房筋あるいは心房心内膜の限局性線維化病巣が見出された. 心臓神経の病変は16例にあり, その病変は心臓外心臓神経における神経線維の多中心性巣状脱落であった. 神経病変のあった16例中, 7例は交感および副交感 (迷走) 神経系の両系で, 1例は交感神経系で, 8例は副交感神経系で観察された.
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