日本中央競馬会競走馬総合研究所報告
Online ISSN : 1884-4626
Print ISSN : 0386-4634
ISSN-L : 0386-4634
馬骨格筋ミオシンの分子構築に関する研究
山口 守Alissa WINNARD竹花 一成Michio MUGURUMA山野 秀二Lu AIPINGJerome MASTY大羽 利治Maureen HUNTER吉川 博康吉川 堯
著者情報
ジャーナル フリー

1993 年 1993 巻 30 号 p. 15-25

詳細
抄録

サラブレッド種の横行胸筋, 中臀筋, 橈側手根伸筋, 腓腹筋, 下行胸筋, 内肋間筋, 頸長筋, 横隔膜および咬筋の骨格筋9ヵ所から骨格筋ミオシンを分離し, 速筋および遅筋の分布とミオシンのL鎖とH鎖のサブユニットとの関連性を検討した。
その結果, 橈側手根伸筋と腓腹筋ミオシンは, H鎖 (HCf:f=速筋) 90%以上およびL鎖 (LC1f+LC2f:LC1=21,000, LC2=19,000ダルトン) 100%で速筋性分子構成が優勢であった。下行胸筋と内肋間筋ミオシンは, 速筋性L鎖 (LC1f&LC2f) が遅筋性L鎖 (LC1s&LC2s:S=遅筋) よりやや優勢であるが, 速筋 (HCf) および遅筋性 (HCs) H鎖がほぼ同等量含まれていることより中間型に分類された。咬筋のL鎖およびH鎖は, ともに遅筋性のミオシン分子構成をもち, 典型的な遅筋に分類された。頸長筋と横隔膜ミオシンは, ほぼ同等量の速筋および遅筋性L鎖を含み中間型に分類されたが, H鎖は遅筋性のみであることより特殊な分子構成をなしているものとみなされた。内肋間筋, 橈側手根伸筋および横隔膜筋は, 遅筋性L鎖の異性体 (LC1s) を含んでいた。内肋間筋と下行胸筋は, ほぼ同等量の速筋および遅筋性H鎖を含んでいた。横行胸筋と中腎筋はLC1fとLC2fサブユニットが優勢で, 計量可能なLC3f (LC3=17000ダルトン) が存在することや, 速筋性H鎖が100%存在することより速筋に分類された。
以上の成績より, 馬の骨格筋ミオシンの分布には, 一個体間に多様性がある事が明らかとなった。

著者関連情報
© 日本中央競馬会 競走馬総合研究所
前の記事 次の記事
feedback
Top