小学校英語教育学会誌
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研究論文
英語科教育実習生の可能自己:物語られる自己教師像
糸井 江美
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2014 年 14 巻 01 号 p. 115-130

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抄録

可能自己理論に基づき、小学校教員を目指す英文科所属の大学4 年生、3 名の学習動機を質的研究により調べた。主なデータは10 ヶ月間に4 回実施したインタビュー、文章に表した理想の教師像(2012 年の4 月と2013 年の1 月)、教育実習ノート、実習期間中に毎日送信されたe メールによる報告などである。ナラティブ分析により、3 人は4 週間の教育実習を経験することでより具体的な理想的自己(理想とする将来の教師像)を持つことになったと同時に、英語運用能力が足りないことを自覚することで避けたい可能自己(英語が話せなくて人前で恥をかく英語教師)を強く持つようになったことが分かった。英語が流暢に話せる教師になるために、英語検定試験の受験を考えたり、発音の教材を購入したりしたが結局積極的に取り組むことはなかった。避けたい可能自己を持つことで十分動機付けはされたが、それは教育実習中に恥ずかしい思いをしたことから生まれたもので、将来教えることになる子どもたちへの教育的影響を考慮したものではなかったと考えられた。経験不足や情報不足である学生はたとえ4 週間の教育実習で現場の状況を感じることができても遠い未来展望を持つことができず、現場から離れた後は時間の経過とともに可能自己の動機付け効果が弱くなったと推測された。 大学では英語を話すことを中心としたクラスを増やし教育実習生の英語運用能力を高めると同時に、遠い将来を展望できる想像力を養うことも重要である

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© 2014 小学校英語教育学会(JES)
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