2016 年 16 巻 01 号 p. 34-49
次期学習指導要領において,小学5,6 年生の外国語が教科となり,「読む」「書く」ことが学習内容に含まれるとされる。今後,日本の小学校でアルファベット大文字・小文字の読み書きや,英語の「音」の指導が始まるであろう。しかし,小学校でこのように「読む」ための素地が築かれた場合でも,中学校からの本格的な「読む」学習に段差なく繋げるためには,まだ何か橋渡しとなる指導が必要であると考える。フォニックスの指導もその一つであるが,英語にはそのルールから外れるものも多く,不規則な読み方をする単語や,単独では殆ど意味を伴わない機能語も多く含まれる。これらはサイト・ワード(Sight Word)と呼ばれ,英語圏の子ども達が母語を正しく読み書きできるようになるためには,学校や家庭において幼児期からこの学習が必須であるという。 本研究では,日本の英語教育の中ではまだあまり馴染みのないサイト・ワードについての理解を深め,小学校外国語活動への導入を検討した。アルファベットと音素の認知がある程度進んだ小学6 年生に,1 ページに絵と1 文が載るシンプルなサイト・ワード絵本を利用してなぞり読みをさせたところ,それまでの学習では扱わなかった音韻を含む単語の認知及び英文の意味理解に繋がったと考えられ,「一人で読めた」という経験が「読む」ことや「書く」ことへの興味・意欲を高める結果となった。