経済学論集
Online ISSN : 2434-4192
Print ISSN : 0022-9768
論文
4G周波数オークション・ジャパンにおけるルール設計:
情報開示インセンティブと複雑性緩和
松島 斉
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2012 年 78 巻 2 号 p. 28-45

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抄録

本論文は,日本において最初の周波数オークションの事例となることが期待される「4G周波数オークション・ジャパン」について,「日本型パッケージ・オークション(Japanese Package Auction(JPA))」と称されるオークション・ルールの骨子を提示することによって,周波数オークションを現実に理想的な形で実施できることを説明する.オークション・ルール設計の際に留意するべき様々な観点の中で,特に重要とされる「情報開示インセンティブ」と「意思決定の複雑性回避」が,集中的に検討される.

パッケージ・オークションのルールとして知られる「VCGメカニズム」を搭載することによって,正直に価値申告するインセンティブを入札者に提供することができ,効率的配分が達成できる.設計案JPAでは「技術中立性」が保持される.そして,周波数利用免許を複数のアイテムに分類する,クロック式オークションによる価値発見ステージを導入する,などの工夫によって,入札者の意思決定の複雑性が劇的に緩和される.売却される免許の数が多くないことと,免許が比較的均質であることなどから,海外の事例にみられるようなパッケージ・オークションの導入を阻む可能性のある様々な問題点は,4G周波数オークション・ジャパンにはあまり該当しないことが説明される.

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© 2012 東京大学
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