本稿は,第二次大戦後のアメリカにおいて実施された退役軍人福祉の展開過程を,排除の側面に着目しながら検討する.これまでの先行研究では,1944年6月22日に立法化された復員兵援護法の,戦後アメリカ社会に対する影響をめぐり議論が蓄積されてきた.近年ではとりわけ,戦後の復員支援プログラムの実施過程における差別的な実態が検証されてきた.しかしながら,いずれの主要な研究も,差別に対して抗議した団体側の史料に基づき検討していたため,退役軍人福祉プログラムを管轄した退役軍人庁内での議論,そして団体と行政側との双方向的な関係性については十分な分析がなされていない.本論文では,あらたに退役軍人庁内の未公刊史料を検討することで,第二次大戦後のアメリカにおいて,社会的な団体からの改革要求を受けた退役軍人庁が,差別的な運営体制の是正に向けて取り組みだしていく過程を明らかにする.