抄録
幹事会よりの課題は,国有林経営の歴史的展開と森林国有の現代的意義であった。本報告では(1)国有林野所有の土地処分の現状を「金融資本的土地支配」の進行のもとでの,資本による"旧き土地所有"の解体とその再構築であること,(2)森林国有の歴史的意義とその世界的動向について分析し,日本資本主義の国家的林野所有をめぐる諸相を森林国有の現代的意義から検討し,(3)ブラジル・サミットにおける「S・D」概念の「保続思想」への"すりかえ"と,それにもとづく「流域管理システム」への政策転換について論じ,(4)戦後国有林の位置を,戦後改革を起点とする巨大な国家的林野所有の成立とその展開過程の分析から明らかにし,(5)現段階の国有林問題を,日本資本主義の国土保全システム再構築の一環としての国家セクターの再生として位置づけ,森林国有の現段階的意義を明らかにする。