抄録
インドネシア,ジャワ島の農村部には,ココヤシ等の果樹を中心にさまざまな有用植物が混植された混合樹園地(Mixed garden)が広く発達している。近年,農家によってさかんに植栽されるようになったモルッカネム(Paraserianthes falcataria)の事例を通して,混合樹園地における用材生産の特徴を明らかにした。モルッカネム植栽は,屋敷地,畑地の境界,畑地の内部へと進展してきた。この過程でモルッカネムと他の作物が混作され,混合樹園地が形づくられている。混合樹園地のモルッカネムは,個々の農家単位ではわずかな生産量であるが,集落単位・村単位でみると,まとまった生産が行われている。インドネシアでは,農家単位で生産されるコーヒーやゴム等の樹木作物が,大規模プランテーションに勝る総生産量をあげており,モルッカネムの事例は,林業部門においても同様に個々の農家を単位とした用材生産が展開し始めていることを示唆する。複数の作物から継続して収穫が得られるという混合樹園地の利点が,農家単位の生産の安定化に寄与していると考えられた。