林業経済研究
Online ISSN : 2424-2454
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森林管理主体における伝統と近代の地平(統一テーマ:「国際化・分権化」時代の森林管理問題,1998年春季大会論文)
三井 昭二
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1998 年 44 巻 1 号 p. 11-18

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抄録

これからの森林管理においては,地方分権に裏づけられた公的管理の方向が大きな流れとして登場せざるをえないだろう。その際に,森林管理主体によるさまざまな努力や試みにも配慮していく必要があろう。これらの主体においては,単なる近代化を追い求めるのではなく,<伝統>と<近代>との織りなす調和をみいだしていくことが大切である。大規模林業経営のなかには,イエをベースにして地域,環境,国際情勢に配慮しながら,経営の近代化を図っているものもある。伝統的コモンズである入会林野は,一般に衰退しているなかで,伝統と近代のはざまでの変容もみられる。さらに,都市とのかかわりのなかから,<新しいコモンズ>ともいえる森林ボランティアの活動や新しい「入会地」の発想がうみだされている。いっぽう,森林管理をとりまく政策状況も,地方分権化は不発におわっているが,林政審答申では地域森林計画等の策定過程への住民参加がうちだされるなど,新しい展開がみられる。また,森林管理上において栓桔となっている近代的土地所有に対しては,利用を優先するたあに根本的な制度の変更が必要になってきている。

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© 1998 林業経済学会
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